継続的売買取引における売主の注意点

実務において、買主が長年にわたり、同じサプライヤーから製品を購入するケースはよく見られる。このような取引の特徴は、継続的取引、継続的決済である。双方間に未払金トラブルが発生した場合、代金と取引の対応関係、貨物と取引の対応関係などについて意見が対立しやすい。意見の対立はしばしば以下の原因によるものである。

一、約定が不明確である。一般的に、規範に合致する書面契約の未締結、又は一部の注文の欠落などにより、検収、代金決済、違約責任などが明確にされていない。『民法典』第510条には、「契約発後、当事者が品質、代金または報酬、履行場所などについて約定を行っておらず、または約定が不明確である場合は、協議により補充することができる。補充協議書が合意に至らない場合は、契約の関連条項または商慣習によって確定する。」と規定している。そのため、約定がない場合は、双方の商慣習を整理して説明する必要がある。採納されるか否かは、売主のこれまでの取引資料の完備性に依拠する。

二、代金のやり取りが不明確。たとえば、支払額と注文額の不一致、納品書と注文書の不一致などにより、主張した金額に対応する注文、納品及び検収証明書を証明することが困難となる。また買主が関連取引に係る訴訟の時効は過ぎていると直接否定する可能性もある。

従って、売主としては継続的売買取引について、以下のことに留意する必要がある。

まず、取引開始前に、全面的かつ規範に合う契約の締結を確保し、代金支払のほかに、品質に関する検収と違約条項には特に注意する。

次に、配送受領記録、検収証明書など履行過程における証拠の保存に重点を置き、金銭支払の対応性には特に注意する。金銭の授受は、単価、納期、会計期間など、多くの商慣習を証明することができる。また金銭授受は、違約責任を約定していない場合に、売主が未払による違約金を主張する際の重要な根拠にもなる。そのため、売主は代金が一対一の対応を確保しなければならない。買主からの支払額が不規則で、一対一の対応ができない場合は、確認書、取引明細書などで補強したほうがよい。上述した正式な書状を使用するのが適切でない場合は、少なくとも企業メール、企業ウィーチャットワークなど会話の形式で補強する必要がある。

山東高裁より公表された魯法案例【2024】066において,売り手と買い手の双方は数年の間に連続して複数の契約を締結し、買主は複数回代金の支払いを行っていたが、送金の際、備考に大まかに貨物代金または設備代金などと記載していただけであった。売主もその発行した大部分の領収書において、相応の契約または工事プロジェクトを備考として記載していなかったため、代金と貨物の明確な対応関係がない、つまり各契約の履行状況を区別することができず、それによって複数の契約に係る訴訟の時効が過ぎたか否かについて意見が対立した。

もしこの事件が北京で発生したとすれば、『売買契約紛争事件の審理における若干問題に関する北京市高級人民法院の指導意見(試行)』(京高法発200943号)によると、具体的な証拠によって異なる結果を求めることができたかもしれない。当該指導意見では、「一定の条件を満たしている状況下で、裁判所は全面的な審理を行って事実を明らかにし、訴訟の時効期間は買手が最終支払日の翌日から再計算する」ことを定めている。「一定の条件を満たしている状況」には、「1、当事者間には長期にわたって継続的売買関係が存在しているが、書面による契約がない場合。2、当事者間には枠組み合意が存在し、その後に複数の契約が締結された場合、または複数回履行した場合。」が含まれる。但し、当該指導意見では、「枠組み合意がなく、独立した契約が複数存在するだけであり、履行の事実が混在している場合は、本条の指導意見を適用することはできない。係る状況があまりにも複雑である可能性があり、指導意見では徹底的に解決することができないからである」と明記している。

第三に、適時に支払を督促する。訴訟の時効は3年であるため、早急に売掛金を回収できるよう尽力するとともに、訴訟の時効が消滅しないよう、企業は定期的に売掛金を整理し、適時書面で支払を督促するという規則を確立するべきである。