改正『会社法』が2024年7月1日に施行されてから、改正条項の遡及効について、中国最高裁は『<会社法>時間効力の適用に関する最高人民法院の若干規定』(以下『規定』という)を公布した。『規定』では、原則として旧法に準じるものとする一方、例外的に5つの状況に対して新法を適用することを明確にしている。5つの状況とは具体的に下記の通りである。
- 新法の適用が立法目的の達成に有利である場合
会社法施行前に発生した以下の7つの状況は新規定の適用を受ける。
1 |
会社の株主総会召集手続が不適切で、会議への参加を通知されていない株主が決議日から1年以内に人民法院に取消を請求した場合 |
2 |
人民法院の判断で株主総会決議、取締役会決議が成立しないと確認され、会社が当該決議に基づき善意の相手方と構築した法律関係の効力について紛争が生じた場合 |
3 |
株主が債権をもって出資し、出資方式によって紛争が生じた場合 |
4 |
有限責任会社の株主が株主以外の人に持分を譲渡し、持分譲渡によって紛争が生じた場合 |
5 |
会社が法令に違反して株主に利益を配当し、登録資本を減少させ会社に損失をもたらし、損害賠償責任について紛争が生じた場合 |
6 |
利益配当の決議を下し、利益配当の期限について紛争が生じた場合 |
7 |
会社が登録資本を減少し、株主がそれに応じて出資額または株式数を減少することについて紛争が生じた場合 |
- 新法の適用によれば有効と認定される場合
1 |
会社がその出資先企業の債務について連帯責任を負う旨を約定し、当該約定の効力について紛争が生じた場合 |
2 |
資本積立金を使用して損失を補うという会社決議が下され、当該決議の効力について紛争が生じた場合 |
3 |
会社がその株式の90%以上を保有する他社と合併し、合併決議の効力について紛争が生じた場合 |
- 会社に係る契約が履行期間を跨ぐ場合の処理
会社に関する契約が新法施行後まで継続されており、下記の3つに該当する場合は新法を適用する。
1 |
上場会社の株式の保有を代行する契約である |
2 |
上場会社の持ち株子会社が当該上場会社の株式を取得する契約である |
3 |
他人が当社または親会社の株式を取得できるよう、株式会社が贈与、借金、担保及びその他の財務援助を提供する契約である |
- 旧法に関連規定がない場合
1 |
株主が払込未了の持分を譲渡し、譲受人が期限通りに払込をしない場合における譲渡人、譲受人の出資責任に対する認定 |
2 |
有限責任会社の支配株主が株主の権利を濫用し、会社またはその他の株主の利益を著しく害し、その他の株主が会社に適正な価格での持分買収を要請した場合 |
3 |
株式会社の株主総会決議に反対票を投じた株主が、会社に適正な価格での持分買収を要請した場合 |
4 |
会社の取締役を務めていない支配株主、実際の支配者が会社の事務を執行した場合の民事責任に対する認定 |
5 |
会社の支配株主、実際の支配者が取締役、高級管理職に指示し会社または株主の利益を損なう活動を行わせた場合の民事責任の認定 |
6 |
関係当事者の合理的な予想から明らかに外れないその他の状況 |
- 旧法では原則的な規定しかなく、新法に詳細な規定がある場合
1 |
株式会社の定款において株式譲渡に制限規定を設けており、この規定によって紛争が生じた場合 |
2 |
会社の監査役が会社資金の流用などの禁止行為、違法な関連取引、会社のビジネス機会を奪う行為や経営制限を受ける同類業務を実施した場合の賠償責任の認定 |
3 |
会社の取締役、高級管理職が会社のビジネス機会を不正に獲得し、経営制限を受ける同種の業務を実施した場合の賠償責任の認定 |
4 |
関連関係にある主体の範囲及び関連取引の性質に対する認定 |
- 清算に関する特別規定
清算が必要となる法律事実が会社法施行前に発生し、清算責任について紛争が生じた場合は、当時の法律、司法解釈の規定を適用する。清算が必要となる法律事実が会社法施行前に発生したが、その発生日時が会社法施行日まで15日未満である場合は、新法を適用する。清算義務者が清算義務を履行する期限は会社法施行日から改めて起算される。