債務者が倒産になった場合、債権者はどう対応すべきか? (一)
企業が債務超過で破産手続きに入った場合は、破産管財人が残余財産を分配する。債権者としては、債権を申告して分配を待つことしかできず、分配された結果も、無いよりはましというごくわずかな程度で、意に適わないケースが多い。
但し、債権の種類、関連債権の訴訟状況などに応じて、より多くの債権を回収するために、自主的により多くの措置を講じることもできる。(注:不動産業界は特別な法的制限を受けるため、この記事では不動産開発企業の破産については検討の対象としない。)
まず、関連債権に係る財産が『企業破産事件の審理における若干問題に関する最高人民法院の規定』第71条に規定された「破産財産に属さない」状況に該当するか否かに注意する。第71条には、「破産財産に属さない」状況として下記の9つを規定している。(1)債務者が倉庫保存、保管、委託加工、委託取引、代理販売、借用、預託、リース等の法律関係に基づいて占有し使用している他人の財産。(2)抵当物、留置物、質物。但し権利者が優先弁済権を放棄したもの又は被担保債権を優先弁済した後の剰余部分は除く。(3)担保物の滅失により生じた保険金、補償金、賠償金等の代位物。(4)法律に基づき優先権が存在する財産。但し権利者が優先弁済権を放棄し、又は特定債権を優先弁済した後の剰余部分は除く。(5)特定物の売買において、占有が未だ移転されておらず、買主が既にその対価を完納した特定物。(6)財産権証明書又は財産権の名義変更の手続を未だ完了していないが、買主に既に交付した財産。(7)債務者が所有権留保売買において所有権を未だ取得していない財産。(8)所有権が国家に属し、かつ譲渡が禁止されている財産。(9)破産企業の労働組合が所有する財産。
トラブルを未然に防ぐという観点では、債務者の信用性に疑問を抱いたり、経営状況の悪化を発見したりした場合、債権者は債権回収を保障するため相手方に不動産担保や動産抵当の提供を要求するのが望ましい。
次に、関連債権が訴訟に入っているか否かも債権回収に影響を与える。具体的には下記の状況がある。
1. 債権者が提訴しておらず、債務者が破産手続きに入った。『〈中華人民共和国企業破産法の適用における若干問題に関する最高人民法院の規定(二)』(以下『破産法司法解釈二』という)第23条及び『九民紀要』第110条の規定によると、裁判所は受理せず、債権者は破産管財人に債権届出をするものとする。そのため、債務者の経営状況が悪化し、協議の望みがないことが判明した場合は、速やかに訴訟を提起し、時機を逸することのないよう注意しなければならない。
2. 債権者が訴訟を起こしており、事件が終結する前に債務者が破産手続きに入った。『企業破産法』第20条、『破産法司法解釈二』第21条などの関連規定によると、裁判所は民事訴訟案件の審理を中止し、破産管財人が債務者の財産と訴訟事務を受継した後に訴訟は継続進行する。又、案件の中止及び破産管財人の関与により案件に時間を要することから、『九民紀要』第110条では、債権者は、まず破産管財人に連絡して債権届出をすることができ、また、債権者会議において議決権を行使するために、裁判所に債権額の仮確定を請求することが可能である。当該債権が破産手続において確認された場合は、取り下げを行うことができる。確認されない場合、債権者は訴訟手続きを続行することができると規定している。
3. 債権者が提訴して勝訴し、執行段階で債務者が破産手続に入った。『企業破産法』第19条、『破産法司法解釈二』第22条の規定によると、裁判所は執行手続きを中止するものとし、債権者は破産管財人に債権届出をしなければならない。但し、この場合、実務において微妙な2つの状況がある。その一つが、裁判所が債務者の銀行口座を凍結しており、代金が裁判所の口座に振り込まれていない状況。もう一つは、代金が裁判所の口座に振り込まれている状況。関連司法解釈では、当該2つの状況下において、相応の代金が破産財産に属するか否かについては定められていない。所有権移転の観点から考えると、代金がまだ債務者の銀行口座にあり、所有権がまだ移転されていない場合は、破産財産に属する。代金がすでに裁判所の口座に振り込まれている場合は、所有権がすでに移転されているため、破産財産には属さず、債権者は返済を得ることができるはずである。 紙面に限りがあるため、破産手続における様々な特殊状況下での債権者が講じるべき措置については次回紹介する。