集団減給、どのように実施すればよい?

不況という背景の下、「リストラ」や「給与削減」のニュースをよく耳にする。「『労働法』第47条では、使用者はその生産経営の特殊性と経済効率に基づき、法に従い自主的に賃金水準を確定すると定められている。そのため使用者に賃金水準を調整する経営自主権があることは明らかなようだ。一方、従業員は往々に、「『労働契約法』第35条、即ち、労働契約の内容を変更するには、双方の合意が必要であるということを根拠に、減給する場合は従業員の同意を得なければならないと主張する。どちらの言い分もそれぞれ一理あるが、どちらの主張を支持するべきだろうか?

減給は個別減給と集団減給に分けられる。従業員個人を対象とする減給方法は2つあり、1つは、前述のように協議し合意に達した上で減給する方法、もう1つは、使用者が法により配置転換を行い、その後、職務に応じて賃金を変更し、合理的な範囲で適切に減給する方法である。個別減給については今回の検討対象ではないので、詳しい説明は省略する。

従業員全員を対象とする集団減給は、状況に応じて、特定の条件を満たす必要がある。

第一に、集団労働契約において「企業の経済効率の悪化により減給することができる」と約定している場合、約定通りに減給を実行することができる。

第二に、集団労働契約がない場合、または集団労働契約に関連約定が存在しない場合は、以下の二つの条件を確認し、その条件を満たす必要がある。

(1)企業が経済効率の悪化、経営難の状況にあるか否か、またその状況がどのくらい続いているか。この点は集団減給の前提条件である。

しかし、経済効率がどこまで悪化すれば集団減給が可能になるのだろうか。

法令にはこれに関連する規定がないため、整理解雇を参考に考えることができる。

『労働契約法』第41条に規定されている整理解雇の条件の一つは、「使用者の生産経営に著しい困難が生じた」である。『<労働法>若干条文に関する説明』(労弁発【1994】289号)第27条には、「「生産経営に著しい困難が生じた」状況については地方政府が定めた困難企業基準に従い定義することができる。」と規定している。従って、使用者は上述の規定を参考に、自身の経営状況と照らし合わせて、「生産経営に著しい困難が生じた」状態にある、もしくは「生産経営に著しい困難が生じた」に近い状態にあるかどうかを判断するとよい。

また、一部の地方においては、整理解雇についての規定がある。例えば、上海市では『当市企業による整理解雇の実施に関する弁法』を公布し、整理解雇について下記の2つの条件を定めている。①企業がすでに労働者の募集を停止している、派遣労働者を戻す(出向者を帰任させる)、残業の停止、減給などの措置を講じた。②上述措置の実施から半年経過後も赤字で、明らかに好転が見られない。しかし、上記の規定は2002年に廃止され、その後、新しい規定は公布されていない。無錫における『〈企業の整理解雇の実施弁法〉の配布に関する無錫市労働局の通知』は、上海市の上記規定と内容はほぼ同じで、現在も有効である。

勿論、経営難の程度について、集団減給の場合は、整理解雇のレベルに達する必要はない。そのため整理解雇における経営難の関連要求は参考にすることができるが、必ずしも満たす必要はない。また、既存の裁判例を見てみると、殆どの裁判所が、3年連続で赤字の財務報告を行った場合に、企業の経済効率が確実に悪化していると認定している。注意が必要なのは、多くの裁判例から見ても、コスト低減・経営改善のためだけに集団減給を行う場合は、通常認められない(例えば、(2021)滬01民終9999号)。

(2)民主的な協議及び周知に関する法定手続きを実行すること。『労働契約法』第4条によると、企業が労働報酬などの重要事項を制定、改正または決定する際に、民主的な協議及び周知手続きを行わなければならない。実務において、上述の集団減給の前提を満たし、かつ民主的な協議及び周知手続きを行った場合は、殆どのケースにおいて、減給の正当性が裁判所により認められている。しかし、個々のケースによっては、依然として「従業員個人の同意を得ておくべきである」と裁判所が判断している(例えば、(2021)京03民終4988号)。

なお、集団減給をよりよく推進するために、集団減給案を策定する際、使用者は具体的な規則の受容性と合理性を考慮しなければならない。これには等級・職位によって異なる減給比率を設ける場合の基準及び合理性、減給期間なども含む。