医療期間満了後、従業員が元の業務に従事できない場合、先に配転しなければならないのか

『労働契約法』第40条の規定によると、労働者が医療期間満了後に元の業務に従事できず、使用者が手配した別の業務にも従事できない場合、使用者は一方的に労働契約を解除し、経済補償金を支払うことができる。この文面から、会社が一方的に労働契約を解除するためには、下記の2つの前提条件を満たす必要であることが分かる。1、従業員が元の業務に従事できない。2、従業員が使用者によって手配された別の業務に従事できない。

“元の業務に従事できない”というのは、通常、医療期間満了後も引き続き治療が必要で、復職できない状況を指す。『企業従業員の病気或いは労災外の怪我の医療期間規定』第7条によると、医療期間満了後、労働能力の鑑定を行わなければならない。鑑定により1級から4級までの判定を受けた労働者は、退職し、労働関係を解消するものとする。同条では、5級から10級までの判定を受けた労働者はどうするべきかについては定められていない。5級から10級までに判定された労働者は、状況を見ながら、一般的に一定の労働に従事できるからである。そのため、医療期間満了後も引き続き治療が必要で、職場復帰ができない場合は、“元の業務に従事できず、使用者が手配した別の業務にも従事できない”状況にある見做される。

このような状況を処理する場合、会社は従業員に労働能力鑑定を行うよう通知するとともに、職場復帰するよう通知する。また通知を行った証拠及び従業員が職場復帰を拒否した、もしくは職場復帰を怠った証拠を残すよう留意しなければならない。

  配置転換というと、多くのHRは、「法令で配置転換が定められている以上、手続きを行い、配置転換を行わなければならない」と考える。実際、立法の目的は、労働者の健康を考慮し、職場復帰後の業務の強度、難易度をできるだけ軽減させることにある。実務においては、主に関連疾患が再発する恐れのある職位を手配しない(例えば、腰の病気を患っていた従業員に対して腰をかがめる運搬業務を手配しないなど)、もしくは極力、心身ともにリラックスできる職位を手配する(例えば、うつ病から回復したクレーム対応部の従業員を他の部署に配置するなど)などの点を考慮すると良い。ほとんどの状況において、これらは必要かつ可能な配置転換である。

しかし、特殊な状況もある。従業員が従事していた元の業務が会社で最も容易でかつ簡単なものだった場合は、配置転換する適切な職位がない。このような場合はどうすればいいのか?

立法の目的から、機械的に配置転換を行わなければならないというわけではない。しかし、紛争が発生した場合、従業員が元の業務が最も容易であるという事実を否定する可能性は高い。裁判所が「元の業務が最も容易だ」という会社の主張を認めるか否かは不確実である。従って、会社はリスクを最小限に抑えるために、職位の具体的な状況について従業員と十分なコミュニケーションをとり、関連証拠を残し、会社は十分な努力を尽くしたという姿勢を示すことに尽力しなければならない。例えば、(2023)遼01民終10875号事件において、安全管理員という職位は会社で最も簡単かつ容易な職位である。医療期間満了後、会社は安全管理員を務める従業員のために業務内容を調整し、業務の強度を下げた。しかし従業員は依然として任務を果たせなかった。会社は、安全管理員より業務の強度、難易度が低い職位はないと判断し、労働契約を解除した。しかし、一審裁判所、二審裁判所ともに「会社による違法解除」と認定した。注目すべき点は、裁判所は、「会社は従業員のために業務の強度を下げた。従業員は安全管理員より業務の難易度と強度が低い職位があることを証明する証拠を提供しないことから、会社が別途手配でき、かつ従業員の体調に合う職位はない。但し、会社は労働契約を解除する前に、職位の具体的な状況について従業員と十分に話し合い、従業員の意見を十分に聴取した上で労働契約を解除しなければならない。会社が従業員とコミュニケーションを怠り、従業員に労働契約の解除を通知したことは、病気に罹患した従業員など弱者を十分に保護するという労働契約法の立法本意に合わない。」と指摘したことだ。