外国人駐在員と現地法人の間に労働紛争が発生した場合は、どのように対処すべきか?

外国人が中国で就労する場合は、『外国人の中国における就業管理規定』(以下『外国人就業規定』という)に基づいて外国人就業許可証を取得しなければならない。

外国人就業許可証の申請をする際、ほとんどの省・市は『外国人就業規定』第17条の規定に基づき、使用者と雇用される外国人が労働契約を結ぶことを要求する。しかし、一時的な派遣として、中国子会社に勤務するだけで、親会社との労働関係を維持したままの外国人が多い状況であることに鑑み、一部の省や市では、一定の条件を満たす中国子会社に派遣状などの書類を提供することで労働契約の代わりとすることを認めている。一定の条件については、省・市によって異なる。例えば、上海では、多国籍企業や地区本部の場合において、派遣状を通じて中国子会社に高級管理職又は技術者を派遣することができる。

懸念されるのは、中国子会社と労働契約を結んでいる外国人駐在員の間に労働紛争が発生した場合、如何に処理するべきかという点である。

まずは、当該外国人駐在員と中国子会社が労働関係に該当するかを判断する必要がある。

この問題については、実務観点が比較的統一されている。即ち、ほとんどの裁判所が、中国子会社が賃金を支給しているかどうかによって労働関係に該当するか否かを判断する。例えば、(2021)遼02民終7576号案件において、裁判所は「外国籍従業員は中国子会社と労働契約を締結しているが、給料は依然として海外親会社から支給され、かつ当該従業員が海外親会社の派遣状に署名しているため、当該従業員と中国子会社との間に労働契約関係が存在すると認定されるべきではない。そうすることで、外国人従業員が労働契約解除後に海外親会社から相応の賠償を得た後、国内子会社に賠償を主張するリスクを回避するのに役立つ。」と判断した。一方、(2017)滬01民終2768号案件と(2020)魯10民終1902号案において、裁判所は「外国籍従業員が中国子会社へ労働を提供し、中国子会社が外国籍従業員に給料を支給することは、労働関係の基本的な特徴に合致するため、双方間に労働関係が存在する。」と判断した。更に、外国人駐在員の給料を海外親会社と中国子会社がそれぞれ一部ずつ負担する場合は、中国子会社が給料を支払っている以上、金額が少なくても、通常、中国子会社と外国籍駐在員との間に労働関係が存在すると認定される。

また、双方間の関係が労働関係であると判断された場合、外国籍駐在員との労働契約の解除または終了について必ずしも『労働法』、『労働契約法』の規定に基づいて処理するわけではない。その原因としては、このような場合、『外国人就業規定』第25条を適用するか、それとも第22条を適用するか、地方によって意見が異なるからである。

『外国人就業規定』第25条には、「使用者と雇用されている外国人との間で労働紛争が起こった場合、『労働法』と『労働争議調停仲裁法』に基づいて処理する」と規定している。但し、『外国人就業規定』第22条には、「中国で就労する外国人の勤務時間、休憩、休暇、労働安全衛生及び社会保険については、国の関連規定に従い執行する」と規定している。当該文言から見て、「国の関連規定」に従い執行する対象は上述の5つの項目のみに限られ、「等」という表現がつけられていないため、適用対象を広げる余地がない。従って、司法実務において、外国人駐在員との労働契約を解除または終了する場合は、『外国人就業規定』第25条を適用するか、それとも第22条を適用するか、つまり、『労働法』などの関連条項に従い執行するか、それとも双方間の約定に従い執行するかについて、意見のバラつきが見られる。

例えば、上海では、2017年と2018年の判決において、労働契約の解除または終了について、『労働法』及び『労働契約法』の関連規定に従い執行することを認めたケース(例えば(2017)滬02民終1039号など)がある。しかし、それ以降処理規則が変わり、いずれのケースにおいても『外国人就業規定』第22条に従い厳格に執行されている。また、北京市、広州市では、労働契約の解除または終了について、『労働法』及び『労働契約法』の関連規定に従い執行するという観点が主流となっている。例えば、(2018)粤民再267号案件において、裁判所は「1か月前に労働契約を解除する場合、責任を負わないという双方間の約定は『労働契約法』の強行規定に違反しており、無効である。」と判断した。又、(2019)京0108民初28262号案件において、裁判所は、「外国籍従業員が30日間継続して病気休暇を取得した後もなお職場復帰できない場合、会社は責任を負うことなく労働契約を解除できるという双方間の約定は、医療期間の関連規定に違反し、無効である。」と判断した。

以上のことから、中国子会社が、外国人駐在員との労働契約の解除または終了について、『労働契約法』などの規定の適用を避けるために2つの方法が考えられる。一つは、給料は海外親会社が支払うこと、もう一つは、労働契約において解除または終了の条件及び責任について特別な約定を行うことである。こうすることで、少なくとも一部の省・市では認められるはずだ。