製品の生産を停止する場合は、生産中止案内をする必要があるのか?

現代社会において商品がモデルチェンジされる速度は速く、新製品はすぐさま旧製品に取って代わる。日用消費財(FMCG)であれば、問題ないが、電気製品などの耐久消費財は、修理やメンテナンスなどが必要なので、製品の生産停止後、部品の供給問題が発生する。従って、メーカーは2つの問題点を考えなくてはならない。一つは、製品の生産停止後、いつまで部品を供給し続けるべきか。もう一つは、生産中止案内は必要か。

  • 製品の生産停止後、いつまで部品を供給し続けるべきか?

生産停止後の部品の供給期間は製品別によって判断する必要がある。

例えば、テレビ、家庭用冷蔵庫、洗濯機、家庭用エアコン、ガス給湯器、レンジフードなど「三包(修理・交換・返品の保証、以下同様)」を実行する日用家電製品については、『一部の商品の修理・交換・返品責任規定』第7条の規定によると、生産者は製品の生産停止後5年間は技術要求に合致する部品を提供し続ける責任がある。具体的な商品は『三包を実行する一部の商品カタログ』を参照する。

又、自動車製品について、『自動車販売管理弁法』第21条によると、「サプライヤーは生産停止や販売停止の対象となる車種を速やかに社会に公表し、かつ生産停止や販売停止後に少なくとも10年間、部品供給及び相応のアフターサービスを保証しなければならない。」

  • 生産中止の案内をする必要があるのか?

まず、法定の開示義務の有無という観点から考えると、以下の2つの状況下で、生産者は開示義務を負う。

(1)上場会社の主力製品が生産停止となり、経営業績に重大な悪影響を与え得る場合、『上場会社情報開示管理弁法』の関連規定によると、係る上場企業は速やかに公開・開示する義務を負う。例えば、ある上場企業に対する「行政監督管理措置決定書」において、監督管理部門が、「同社が主力製品の生産停止が会社の経営に影響を与え得るという関連情報を速やかに開示していない。上述の行為は『上場会社情報開示管理弁法』第3条第1項、第22条の規定に違反する。」と指摘している。

(2)『一部の商品の修理・交換・返品責任規定』、『自動車販売管理弁法』などの特殊規定を適用する製品について、生産停止後の一定の年限内に部品を供給する場合は、生産者は生産停止日を明確にしなければならない。言い換えると、これらの規定は、生産者が開示義務を負うという旨が示されている。また、生産者のリスク管理という観点から言えば、生産停止日を開示しない場合、年限の起算点がいつになるかという点が争点となり、間違いなく生産者に不利となる。

次に、契約履行のリスク防止の角度から考えると、以下の状況下では、取引相手に製品の生産停止情報を開示しなければならない。

(1)生産者とマーケティングチャネルとの関係においては、生産者が生産を停止すると、契約を履行できなくなったり、マーケティングチャネルの在庫などに影響を与えたりする可能性があるため、生産者は速やかに通知する義務がある。例えば、(2017)滬0151民初5959号案件において、裁判所は「契約履行において、製品の生産停止や製品をアップグレードする場合、被告は適時原告に通知すべきである…しかし、原告が初回注文した際、被告は関連状況を知らせなかった。被告の自認によると、原告が関連状況を開示したことがない」と判断した。

(2)生産停止の対象となる型番に該当するか否かが消費者のアフターサービスなどの重要な権益に影響を与える場合、生産者または販売者は関連状況を開示し、詐欺と認定されるリスクを避ける。判例を検索したところ、販売者が製品の生産停止情報を知らせなかったため、消費者に詐欺として提訴されたケースが多く存在する。裁判所は通常、売り主に詐欺の主観的故意があるか否か、製品の生産停止が消費者の重要な権益に影響を与えるか否かなどを考慮する。(2016)蘇民申5583号案件において、裁判所は「当該製品が法定の販売・使用禁止状況に該当しない場合、生産停止の対象機種であるか否かは、購入者が契約通りに販売者及びメーカーから承諾されたアフターサービスを享受することに影響を与えない。」と判断した。つまり、消費者のアフターサービスに影響を与える場合は、詐欺と認定される可能性がある。