法人株主が抹消された場合、被投資会社はどうすればよいのか?

A社は法人株主3社の出資により設立された。A社の知らないうちに、法人株主の1社が抹消された。その後、当該法人株主及びその選任した取締役の欠員により、株主総会、取締役会の決議の効力、及び市場監督管理局への変更登記手続等の問題で、A社は苦境に立たされることになった。

経済成長の減速や2024年会社法改正による実際払込制度の実行に伴い、A社のようなケースは増えていく可能性がある。現行会社法又は改正会社法ではいずれも、法人株主の抹消について規定していない。会社法では、自然人株主が死亡した場合に如何に対応するかについて、「会社定款に別途規定がある場合を除き、自然人株主が死亡した後、その合法的な相続人は株主資格を承継することができる」と規定しているだけである。そのため、株主が法人株主であり、株主間に法人株主抹消後の対応について約定がない場合、法人株主が勝手に抹消された後、株主会、取締役会の決議及び工商変更手続きなどが確かに厄介な問題となる。

自然人株主が死亡した場合の取扱い規則を参照し、元の法人株主の株主により株主資格を承継することが考えられるという観点がある。司法実務ではごく一部の事件において、この観点を採用し、判決が下されている(例えば、(2019)冀05民終1949号)。また、一部の事件では、裁判所は、「抹消された法人株主が一人有限責任会社である場合は、自然人株主死亡の関連規定を参照して処理することができる」という観点を示した(例えば、(2020)粤0391民初442号)。しかし、自然人株主が死亡した場合の取扱い規則を直接参照して適用することに反対であるいう意見が主流である。有限責任会社は人的要素と物的要素の両方に関わるため、特に抹消された法人株主に複数の株主がいる場合、状況はより複雑になる。

実務において、具体的な状況に応じて、異なる方法を選択し、法人株主抹消後に残される問題を解決することが考えられる。

抹消された法人株主が出資義務を履行していないか、または出資を全部引き出した場合、現行の会社法では、『<中華人民共和国会社法>の適用における若干問題に関する最高人民法院の規定(三)』第17条の規定に基づき、係る法人株主に納付又は返還を催促し、当該法人株主が合理的な期間内に納付又は返還しない場合は、株主会決議により当該株主の株主資格を解消することができる。また改正会社法の適用に伴い、同法第52条「株主の失権」に関する規定に基づき、取締役会の決議を行った後、書面で通知を出したうえで、減資、相応の持分抹消を行うことができる。

抹消された株主に出資上の問題がなければ、上記の方法は使えない。法人株主が存在しないことを理由に、当該株主を退社させるよう、裁判所に訴訟を提起することができるという観点がある。しかし、それは実際には実務に通用しない。その理由は、まず法的根拠が不足すること、また別の角度からみても、会社法の関連規定により元の法人株主は相応の財産権を有しており、当該財産権が清算時に処理されていないだけであるため、関係者の権益を保護するという観点から、裁判所が係る法人株主に直接退社するよう命じるのは不適切であると思われる。

このような場合、相続株主を確定した上で、裁判所に株主確認訴訟を提起することにより株主資格を明確にすること一つの方法として考えられる。

具体的に言えば、法人株主が抹消された場合に、その元清算チーム又は元株主に連絡し、どちらか一方と法人株主の地位を承継することについて協議し、合意に至った場合、裁判所に株主確認訴訟を提起し、判決を以って市場監督管理部門の工商変更登記を行う。裁判例を検索したところ、実務において、当該方法を採用して問題を解決したケースは確かに存在する。

実務において、抹消された法人株主が清算過程中に無断で被投資会社での持分をその株主や第三者に譲渡するという特殊なケースも稀に存在する。このような状況下においては、被投資会社の定款に特別な規定がある場合を除き、通常、会社法又は定款における「他の株主の優先購入権」の関連規定に違反しているため、譲渡行為が無効であると主張することができる。被投資会社は実際の状況に応じて無効であることを主張し、又は譲受人と協議することにより、譲受人から被投資会社の他の株主又は指定の第三者(他の株主が優先購入権を行使する意思がない場合)に譲渡するように促すことができる。

最後に、法人株主が無断で抹消することによるトラブルをできる限り回避するために、会社は以下2点の予防メカニズムを構築しておくとよい。①会社定款において、法人株主が抹消する場合の取扱い規則を明確にしておくこと。②企業情報公示システムにより、不審な噂を聞いたときのフォローアップなどを含め株主の状況をモニタリングし、定期的な確認や連絡を行う。