入社後社会保険の空白期間内における労災責任は誰が負うのか
本来、労災保険における空白期間を作らないよう、新入社員を採用した場合、会社は直ちに新入社員のために社会保険加入手続きを行なわなければならない。とは言うものの、実務においては状況によって会社のやり方も異なる。入社後すぐに社会保険加入手続きを行う会社もあれば、毎月15日から20日までの間で統一的に社会保険加入手続きを行う会社もあり、この場合は15日以前に入社した場合は、一律に社会保険加入手続き期間の日まで待つことになる。特に従業員の離職率が比較的高い製造工場などでは、入社1ヶ月後、さらには試用期間満了後に従業員の社会保険加入手続きを行う会社もある。会社としてはリスクマネジメントの観点から、社会保険における空白期間に従業員が労災に遭った場合、会社は責任を負うべきかという問題を考えておかなければならない。
『社会保険法』第58条には、「使用者は、採用日から30 日以内に従業員のために社会保険取扱機関に社会保険登記を申請しなければならない。」と規定している。そのため、法定期限、即ち採用日から30日以内に使用者が従業員の社会保険料を納付する限り、労災が発生した場合は労災保険基金から賠償を行うべきであるという意見がある。しかし、当該意見のとおり実行すれば、使用者が意図的に社会保険加入手続きを遅らせ、さらに主観的に社会保険加入手続きを行うつもりがなく、従業員が入社後30日以内に労災に遭ってから社会保険加入手続きを行うという不誠実な行為を助長する可能性がある。
各地方の規定を検索したところ、『広東省労災保険基金省レベル計画案配業務規程』だけが条件付きで当該意見を採用している。同規程第164条には、「使用者のこれまでの社会保険加入記録が良好で、保険料納付が連続的に規範化されている場合、または法により新たに設立した使用者である場合は、仮に新入社員が入社後、労災に遭った時にまだ社会保険に加入していなくても、入社後30日以内に追納した場合、保険待遇は従業員の労災発生日から計算する。」と規定している。
例えば(2017)蘇8602行初1153号事件のように、裁判所が「使用者が30日以内に従業員のために社会保険料を納付することは、合理的かつ正常な処理期限を超えず、社会保険料の追納と認定されるべきではない」と判断し、社会保険センターに障害補助金を支払わせる旨の判決を下したケースはごく稀である。但し、当該事件では労働者が医療費を主張していないことを考慮すると、このことから「30日以内に追納すれば労災保険基金が補助金を支払う」ことが無条件に認められたとは言えない。
実務においては、使用者が適時追納した場合、追納日から新規発生した費用は労災保険基金から支払いができるという意見が主流である。当該意見の法的根拠は、『労災保険条例』第62条、「使用者が労災保険に加入し、納付すべき労災保険料、延滞金を追納した後、労災保険基金と使用者は本条例の規定に従い新規発生した費用を支払う」ということである。「新規発生した費用」の範囲については、『若干問題の執行に関する人的資源社会保障部の意見(二)』第3条によると、「(一)業務上の事由により負傷した場合は、保険加入後に新規発生した労災医療費、労災リハビリ費、入院食事補助費、計画案配地区以外の医療、交通、食事、宿泊費、補助器具配置費、生活介護費、1級から4級の障害手当金、及び保険加入後に労働契約を解除した場合の一回限りの労災医療補助金の支払い。(二)業務上の事由により死亡した場合、保険加入後に新規発生した、条件に合致する扶養親族に対する慰謝料の支払い。」 が含まれる。
以上のことから、使用者は従業員のための社会保険料は適時納付するべきである。適時納付が明らかに難しい、かつ生産特性により労災のリスクが比較的高い場合は、雇主責任保険に加入することで一定のリスクを下げることが考えられる。