従業員が最終出社日の帰宅途中に交通事故に遭った場合、労災に該当するのか?
Z社の元従業員である王さんは、2017年7月31日の午後、退職手続を済ませ会社を出た。思いもよらないことに、その帰宅途中に交通事故に遭い、王さん本人に責任はなかったがが、応急手当の甲斐なく命は救われず、当日死亡が確認された。王さんの家族は労災認定を申請し、浦東新区の人的資源・社会保障局もそれを労災と認定した。これに不満を抱いたZ社は、行政訴訟を起こした。最終的に一審裁判所も二審裁判所も浦東新区の人的資源・社会保障局の決定を認めた。((2018)滬01行終1436号)。『労災保険条例』第14条第6項の規定によると、従業員が通勤途中に本人が主たる責任を負わない交通事故で負傷した場合は、労災に認定される。しかし、実務において、会社との間に労働関係が存在しないため、入社当日の出勤や退職当日の退勤途中で従業員が交通事故に遭った場合、「通勤途中」とは言えないという認識を持っている会社は多い。しかし、この認識は誤りである。
入社当日について。入社当日は労働契約に記載される契約発効日であるので、当然通勤途中に該当する。入社手続きの日、即ち従業員が会社に行って労働契約を締結する日であれば、一部の人的資源・社会保障部門は「双方間で労働契約を締結していないが、事実上の労働関係を構築しており、労災と認定される」と判断している。例えば(2020)蘇民申6126号事件において、裁判所は「周さんが通知通りの期日に関連資料を持って会社に行ったことは、双方が労働契約関係の構築について合意に達していたと見做されるべきである。通勤途中は仕事の自然な広がりであるため、労災と認定されるべきである」と指摘している。
退職当日について。『労働契約制度の実行における若幹問題に関する通知』第5条には、「……労働契約の終了時刻は、労働契約期間の末日の24時とする。」と規定している。そのため、自ら退職するか、それとも解雇されるかに係わらず、従業員が通常の退勤途中で本人が主たる責任を負わない交通事故に遭遇した場合、退職手続きを済ませたからと言って労災と認定されないわけではない。
但し、実務においては、従業員が無断で遅刻、早退した通勤途中に交通事故に遭遇するというような特殊なケースもある。この場合は、労災と認定されるのか。『<労災保険条例>の執行における若幹問題に関する意見(二)』(人社部発2016年29号)には、「六、従業員が通勤を目的とし、合理的な時間内に勤務先と居住地を往復する合理的な経路は、通勤途中と見做される。」と規定している。「合理的な時間内」には上述の状況が含まれるか否かについて、司法実務には意見が異なる。
1つ目の意見は、労働紀律違反であるか否かは仕事の広がりであるか否かとは無関係で、労災と認定されるべきであるというものである。例えば、(2020)魯行申594号、(2018)蘇行申135号等。
2つ目の意見は、従業員が労働規律に違反した通勤時間は合理的な時間ではないため、労災と認定されるべきではないというものである。例えば、(2017)粤行申919号等。
判例を検索したところ、1つ目の意見を認める裁決は比較的多くみられた。