AIで生成する画像、文章は著作権法の保護対象の著作物に該当するか

2023年11月の末、北京インターネット裁判所の判決が話題になっている。原告はAIで画像を生成して小紅書(RED)に投稿し、被告は自分の文章を投稿する際に原告の関連画像を使用した。そして、原告は著作権侵害を理由に訴訟を提起した。北京インターネット裁判所の一審判決は、「本件のAIで生成した画像は『著作権法』の保護対象の著作物に属するため、権利侵害が成立する。」と認定した。

本件について、北京インターネット裁判所は、「画像が著作物になるか否かは、知的成果に属するか否か、独創性があるか否かによって認定する。」と指摘した。

まず、「知的成果」の認定について、当該裁判所は「原告は画像の構想から最終的な選定まで、人物の表現方法の設計、プロンプトの選択、プロンプトの順序、パラメータの設定、どの画像が期待に添うかなどの選定を含めて、一定の知力を働かせた。画像は原告の知力を表しているので、「知的成果」の要件を備えている。」と判断した。

次に、「独創性」の認定について、当該裁判所は「原告は人物やその表現方法などの画像要素をプロンプトにより設計し、画像の構図などをパラメータにより設置し、原告の選択と取り決めを体現している。また原告はプロンプトの入力、パラメータの設定により、最初の画像を取得した後、プロンプトの追加、パラメータの修正及び調整を絶えず続け、最終的に本件に関わる画像を取得した。この調整過程も原告の審美的選択と個性的判断を体現している……本件の画像は「機械的な知的成果」ではない。反対の証拠がない場合に、本件の画像は原告が独立して完成したもので、原告の個性的表現を体現していると認定することができる。」と指摘した。

本件は中国においてAI生成画像による著作権侵害の初めての事件である。これに先立ち、深セン南山裁判所はAI自動生成文章の著作権侵害事件((2019)粤0305民初14010号)について判決を下した。当該事件においては、深セン南山裁判所は「AIで自動的に生成した文章は著作物になる」と認定し、「本件の文章の生成過程から分析すると、当該文章の表現形式は原告の創作チームメンバーの個性的取り決めと選択によって決められたものであり、その表現形式は唯一ではなく、一定の独創性を有する」と主な認定理由を指摘した。

それにもかかわらず、AIで生成したコンテンツ(画像、文章など)は著作物にあたるか否かについては、法学と司法実務における意見が大きく異なる。問題の核心は、AIで生成したコンテンツに独創性があるか否かについての意見が一致しないことにある。

AIの技術的特質に基づいて、AIで生成するコンテンツの独創性は認められるべきではないと思われる。

司法実務において、独創性を認定するとき、通常、2つの要素を考慮する。1、著作者が独立して創作したものであるか否か。2、表現の取り決めは著作者の選択、判断を体現しているか否か。

著作者が独立して創作したものであるか否かの要素については、ユーザーがAIを利用しなければ、自分で相応の「著作物」を創作できない場合は、自分で創作したとは言えない。この点において、技術的な手段で創作した著作物とは明らかに異なる。例えば昔の手描きや定規を使った絵、現在のコンピュータで製図するなど技術的な手段は、あくまでも「ツール」の役割を果たしているに過ぎず、「ツール」を用いて自分の「思想」を表現するのは著作者である。米国の「スペースオペラハウス」の著作権登録棄却事件は、この見解を反映している。ジェイソン・アレンがAIシステムMidjourneyで作成した「スペースオペラハウス」は、2022年コロラド州博覧会のアートコンペティション賞を受賞したが、米国著作権局に著作権登録を申請したところ、米国著作権局は最終著作物の形成過程においてAIシステムの影響が実質的に存在するとして、申請を棄却した。

表現の取り決めについても、著作者の選択、判断を体現しているか否かの要素において同様の結論になる。

まず、AIによるコンテンツの生成は、AIが十分なデータ/素材を「与えられた」という前提を満たす必要がある。言い換えれば、AIは「人」からの指令に基づいて、既存のデータ/素材を選択、配列、組み合わせ、すなわち表現手段において編集作品に類似する。しかし、AIで生成するコンテンツは明らかに編集作品の定義と要求に合わない。

次に、AIで生成するコンテンツが知的創造に達しているか否か。前述のように、AIによるコンテンツの生成は既存のデータ/素材を配列し、単純な線、事実情報、グラフ公式、法律法規などの非著作物、または『著作権法』を適用しない部分を排除するもので、残りは全て既存の著作物である。この場合に、既存の著作物の配列、組み合わせなどに対して「知恵を使った」としても、通常、「知的創造」には至らない。

最後に、逆に言えば、AIで生成するコンテンツは『著作権法』の保護対象の著作物になると認定された場合、当該「著作物」はオリジナルデータ/素材に基づいた元の著作物の著作権を侵害している疑いがある。司法結論の傾向から、好ましくない循環に陥る可能性がある。

そのため、現行の規定及び現在のAI技術段階から言えば、AIで生成するコンテンツを著作物とし、著作権法による保護を認めるのは適切ではないと思われる。