協賛によるリスク及びリスク回避
利益を社会に還元し、ブランドの知名度を高めるために、自発的にまたは招待に応じて公益活動、テーマ会議活動、試合などに協賛する企業は少なくない。本来はウィンウィンの効果が期待できるが、適切に処理しなければ、悪い結果をもたらし、企業にリスクをもたらす可能性がある。
通常、協賛者になるリスクは、次のようなものが含まれる。
第一、他の要素と合わせて考慮すれば、商業賄賂になる可能性がある。企業が競争上の優位性を得るために実施する協賛行為は、『不正競争防止法』、『商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定』などに違反するため、行政機関、司法機関に商業賄賂と認定される可能性がある。例えば、穂商工処字【2018】179号事件において、行政法律執行機関は「ある研究所によって開かれたシンポジウムに対してS社が1万元を協賛する行為は商業賄賂になる。」と認定し、過料を科した。(2015)泉刑初字第00090号事件において、裁判所は「X病院によって組織された2回の「江蘇超音波医学新技術新進展学習班」に対してF社は計12万元を協賛した。」と認定し、他の贈賄行為と合わせて考慮した上で、最終的に「F社は組織贈賄罪になる。」と認定した。
第二、『広告法』に違反するリスク。『広告法』では、特定の業界の広告に対して特別な規定を行っている。仮に協賛の対象が広告であるとしても、関連規定に合致しなければ違法広告行為と認定される。例えば、寧市監東処【2020】17号事件において、不動産会社N社は全国交通安全デーのイベントである公益活動を協賛し、当該公益活動の宣伝において8秒の「90~130平方メートルの住み心地の良い豪華住宅」というN社の宣伝広告を盛り込んだ。建築面積または実用面積が明記されていないため、行政法律執行機関はそれを違法広告と認定した。
第三、違約により責任を追及されるリスク。一部の協賛対象者、特にブランド保護意識の強い組織/イベント(オリンピックなど)は、宣伝に対する具体的な要求を関連契約において特別に約定する。例えば、「商標使用の承認プロセス、あるいは協賛者の宣伝行為、内容が契約の約定を厳守しない場合は、責任を追及されるリスクがある。」ことを約定する。
第四、権利侵害のリスク。偶発的ではあるが、リスクは現実に存在している。例えば、(2021)粤民申2644号事件において、あるチームがローラースケートの試合に参加することにS社が協賛し、公印を貸してそのチームの申し込みに協力した。その試合中、一人の選手が怪我をした。最終的に裁判所は「S社は試合に参加する選手の資格の有無、健康状況及び人身事故保険加入の有無などに対する監督管理義務を負う。しかしS社は監督管理義務を尽くしておらず、相応の責任を負うべきである。」と認定した。
第五、製品責任リスク。一部の協賛者は「協賛品は無料で提供されたもので、製品の品質に責任を負うべきではない。」と考えているが、この認識は間違いである。その理由は、店が無料で贈り物を提供したとしても、これにより法的責任を軽減することができないのと同じである。実は、多くの協賛者は協賛により宣伝・普及され、ブランドの知名度とそのイメージを高めている。そのため、協賛品が『製品品質法』などの関連規定を満たしていない場合、協賛者は責任を追求される可能性がある。
従って、実務において、企業が協賛する場合は、以下のポイントからリスクを防止・把握するよう提案する。
1、事前審査を重視する。審査の内容は、(1)協賛対象者の主体状況を審査する。主体情報、主体資格など一般的な審査内容のほか、協賛者と協賛対象者の関係を確認し、商業賄賂と認定される可能性のある商業関係、例えば上下流などをできる限り回避しなければならない。(2)協賛対象者が活動を行う目的、協賛品の用途、活動の真実性などを含む協賛活動の内容を理解する。(3)協賛対価の合理性を確認し、協賛金が高すぎる、もしくは協賛品が明らかに多すぎるなどの場合は、協賛活動の規模/成果との間に大きな差が生じないようにする。
2、協賛協議書を慎重に締結する。(1)協議書では協賛活動の開催目的、協賛金/協賛品の用途などを明確に約定する。例えば、“競争上の優位性を獲得するため”などのような表現を避け、協賛活動がブランドの普及、宣伝の役割をもつことなどを強調する。(2)支払条件を審査し、個人口座への振り込みは避ける。(3)当事者双方の権利と義務を合理的に確定する。例えば、協賛者が協賛活動の開催に対して安全管理を徹底するなど。また、最低購入量などのような不合理な取引条件の設定を避ける。
3、協議書履行に対するファロー管理を重視し、関連証拠を保存する。財務において、協賛者は事実通りに記帳し、協賛対象者に対して協賛活動/プロジェクトの開催状況をタイムリーにフィードバックさせ、活動の写真やビデオ、出席署名表、成果資料、費用明細など協議書の履行状況を反映する書類を提出させるとともに、必要に応じて活動の開催状況、協賛金の用途、および相手が協賛協議書で約定された義務を確実に履行しているか否かなどの実地調査を行う。また、やり取りにおける連絡記録、支払伝票などは保存する。