会社が営業許可証を取り上げられた場合、株主は会社の債務に対して連帯責任を負う?
王さんは数年前に友人のM社の株主になり、5%の持分を保有している。M社の経営状況は悪く、利益も出ていないが、王さんは気にとめておらず、「払込を引き受けただけで、実際に払い込んだわけではなく、損はない」と思っていた。昨年、M社の営業許可証を取り上げられたが、株主たちは何も行動していない。王さんは「営業許可証の取り上げは、人が死んだことに相当し、尾を引くはずはない。仮に問題が発生しても、有限責任会社の株主は有限責任を引き受けるだけで、自分は最大5万元を出せば事足りるだろう。」と推測していた。しかし、最近になって、王さんのもとに突然裁判所の召喚状が届き、M社の債権者が提訴し、M社の100万元余りの債務に対して王さんにも連帯弁済責任を負うよう請求したことが分かった。王さんはたちまちどうしたらよいか分からなくなった。
これはどういうことだろう?
おそらく多くの人は王さんと同じように、会社が営業許可証を取り上げられると、その法人格が消失すると思っている。実はこれは大きな認識の誤りだ。「企業法人営業許可証の取り上げは、工商行政管理機関が国家工商行政法規に従い、違法な企業法人に対して行う行政処分である。営業許可証を取り上げられた後、企業法人は法により清算を行わなければならない。清算手続を終了し、工商登記抹消を行った後、当該企業法人は消滅する」(【2021】最高法民申2470号)。営業許可証の取り上げは『会社法』第180条の会社解散の原因の一つであり、清算抹消手続を行ってから、法人格が消滅する。
『会社法』第183条によると、この場合、「解散事由の発生日から15日以内に清算グループを設立し、清算を開始しなければならない。有限責任会社の清算グループは株主によって構成される。株式会社の清算グループは取締役または株主総会で決定された者によって構成される」。また、会社法では組織清算の流れ、清算作業の内容及び期限などについて明確に規定している。法により、株主は上述の清算義務を履行しない場合、会社の債務に対して連帯責任を負うというリスクがあり、また当該連帯責任は株主が払込を引き受けた出資額に限らない。
『会社法司法解釈(二)』第11条、第15条,第18条によると、株主が責任を負う可能性のある具体的な状況は下記の通りである。
1、株主が清算義務の履行を怠り、これによって会社の主要財産、帳簿、重要書類などの滅失をもたらし、清算が困難になり、債権者が会社の債務に対して連帯弁済責任を負うよう主張した場合、裁判所は法によりそれを認める。
清算義務の履行を怠ったという判断については、『九民紀要』の観点を参考にすることができる。法定清算事由が発生した後、株主が清算義務を履行できる場合に、故意に清算義務の履行を遅らせたり、拒否したりし、又は過失によって清算ができなくなるなど消極的な行為が該当する。株主は清算義務を履行するために積極的な措置を講じたことを証明し、または小株主は会社の取締役会や監事会のメンバーではなく、当該機関のメンバーを選任したこともなく、かつ会社の経営管理に関与したことがないことを証明し、「義務の履行を怠った」ことに該当しないという理由で、会社の債務に対して連帯弁済責任を負わないと主張した場合、人民法院は法によりそれを認める。
本件の王さんは関連証拠があれば、連帯弁済責任の負担を回避できるかもしれない。
2、株主が期限を過ぎても清算グループを設立せず、これによって会社財産の切り下げ、流失、毀損や滅失を招き、債権者が損失範囲内で会社の債務に対する賠償責任を負うよう主張した場合、裁判所は法によりこれを認める。この場合に、債権者は会社財産の切り下げ、流失、毀損や滅失に対して一定の証明責任を負う。そうでなければ、株主に賠償責任を負わせることは難しいだろう。
3、株主が清算グループのメンバーであり、かつ清算抹消手続が規定に合致しない場合。具体的には、規定通りに通知と公告の義務を履行せず、または確認されていない清算案を実行し、債権者に損失を与えた場合に賠償責任を負わなければならない。
最後に、株主が会社財産を無償で受け取るという特殊な状況もある。『民事執行における当事者の変更、追加の若干問題に関する最高人民法院の規定』第22条の規定によると、会社が執行債務者として営業許可証を取り上げられた後、株主がその財産を無償で受け取り、これにより当該執行債務者には残余財産がなく、または残余財産が債務を返済するに足りない場合は、株主を執行債務者に追加することができる。
以上のことから、出資額に問わず、株主は出資対象となる会社の経営状況に注目すべきである。営業許可証を取り上げられた場合、今後起こり得る不測の法律リスクを避けるために、直ちに法により清算義務を履行し、会社抹消を遂行すべきである。他人の協力を得られず、うまくいかない場合は、自分が清算義務を履行するために積極的な措置を講じた関連証拠を保存し、リスクをできる限り低減させるべきである。