譲渡禁止特約付き債権が譲渡されたらどうなる?

債権譲渡行為を有効にするためには、通常、4つの要件を満たす必要がある。①有効な債権が存在する。②譲渡の対象となる債権が譲渡可能である。③有効な債権譲渡契約が存在する。④債権譲渡について債務者に通知すること。これらの要件を満たさなければ、債権譲渡は債務者に対して効力を発揮しない。

因みに、債権が「性質上譲渡できない」、もしくは「法令により譲渡できない」債権に該当しない限り、原則上、債務者の同意を得ることなく、債務者に通知すれば譲渡することができる。

しかし、当事者双方が債権譲渡不可という約定をしている場合も、通知するだけで良いのだろうか?債務者が異議を申し立てたらどうするべきだろうか?

『民法典』第545条には、「当事者間に非金銭債権を譲渡してはならないという約定がある場合は、善意の第三者に対抗してはならない。当事者間で金銭債権を譲渡してはならないという約定がある場合は、第三者に対抗してはならない」と規定している。つまり、金銭債権であれば、譲受者が認識しているかを問わず、債権者と債務者との約定は第三者である譲受者に対抗できない、つまり債権譲渡は有効となる。非金銭債権の場合は、譲受者が認識していない場合に限り、譲渡が有効となる。

ここで疑問となるのは、譲渡禁止特約付き債権が譲渡されると、債権者(即ち譲渡者)、債務者、譲受者に対してそれぞれどのような影響を与えるのか、ということである

まず、譲渡者は、契約において「当該債権を譲渡してはならない」と約定しているので、債権譲渡行為は違約となるため、違約責任を負うことになる。例えば、(2022)京0106民初15108号事例において、裁判所は「本件は当事者の約定により譲渡してはならない状況に属する。A社が契約債権を譲渡する行為は違約にあたるため、相応の違約責任を負わなければならない」と判断した。仮に違約側が「双方で約定した違約金が高すぎる」と主張すれば、裁判所は事案毎の具体的な状況に応じて調整する可能性がある。例えば、上述の事例においては、双方間で違約金を10万元と約定していたが、B社が譲渡行為による直接的な経済損失を証明できないため、最終的に裁判所は、総合的に勘案したうえで違約金を3万元に調整した。なお、債権譲渡行為が無効となった場合、譲渡者と譲受者との約定によっては、譲渡者は譲受者に対して違約責任を負う可能性もある。

次に、債務者ついて。債務者は、上述のように、契約の約定に基づいて譲渡者に対して違約責任を主張することができる一方、債権譲渡行為が有効であれば、譲受者に対して債務を履行しなければならない。この場合、債務者が「契約では譲渡不可を約定した」ことを理由に依然として譲渡者に債務を履行する場合、債務者は譲受者から債権を主張されるリスクに直面する可能性がある。

また、譲受者の立場から考えると、債権譲渡行為が有効で、かつ債務者に対して効力を生じた場合は、譲受者は債務者に対して債権を直接主張することができる。債権譲渡行為が無効で、かつ契約の約定により譲渡人の責めに帰することができる場合、譲受者は譲渡者に対して違約責任を主張することができる。