特殊労働時間制導入時のポイント

労働時間制度には、標準労働時間制、不定時労働時間制、総合計算労働時間制の3つがある。そのうち、不定時労働時間制と総合計算労働時間制は、労働行政部門の承認を経て初めて施行できるため、通常、特殊労働時間制と総称されている。当該2つの特殊労働時間制の適用対象については規定が比較的明確なため、経験豊富なHR達は熟知しているだろう。しかし、以下のような実務上の難点についても理解しているだろうか?

Q:特殊労働時間制を申請するには民主的協議手続が必要であるか?

A: 特殊労働時間制は労働者の休憩・休暇、残業代などに直接影響するため、実務において、多くの地方の労働行政部門は、特殊労働時間制の実施に対して労働組合又は従業員代表大会の書面意見の提出を求めている。

又、一部の地方、例えば浙江省では、従業員代表又は従業員代表大会の書面意見の提出を要求している。この時、従業員代表との労働契約及び従業員代表選挙決議の提出も求められる。

その他、従業員本人による書面の同意書類の提出を求める地方もある。

従って、使用者は、特殊労働時間制を申請する前に、まず所在地の労働行政部門の具体的な要求を確認し、状況に応じて適切な民主的手続を行わなければならない。

Q:特殊労働時間制を派遣社員に対して実施できるか?

A:労働関係であれ労務関係であれ、特殊労働時間制の審査許可基準は、役職が要件を満たしているか否かであるため、派遣社員に対しても特殊労働時間制を実施することができる。派遣社員について、特殊労働時間制を申請する主体は、派遣業者ではなく使用者である。また、『労務派遣暫定規定』第7条の「労務派遣協議書において記載すべき内容」では、労働時間の記載が必要であることが定められている。当該規定から、使用者は事前に告知しておく義務がある。

個別の省や市では、派遣社員に対して特殊労働時間制を適用することについて特別な規定がある点には、注意が必要である。使用者は所在地の規定に留意しながら実施しなければならない。例えば、河南省の『使用者における不定時労働時間制及び総合計算労働時間制実施に対する審査許可・管理を一層強化することに関する通知』では、「使用者は派遣社員の連署による同意意見を取得しなければならない」ことを定めている。

Q:本社で特別労働時間制の許可を取得した場合、支社は別途申請しなくても良いのか?

A:『企業における不定時労働時間制と総合計算労働時間制の実行に関する審査許可弁法』(労部発(1994)503号)第7条の規定によると、各省・市の労働行政部門は地方向けに特殊労働時間制の審査許可方法を制定することができる。そのため、各地方の規定には、ばらつきが見られる。検索結果によると、主に以下の3つのタイプに分けられる。

(1)本社がその所在地にて特殊労働時間制を申請し、許可を取得した場合、支社にも直接適用される。例えば、四川、天津、寧夏、内モンゴル。

(2)本社がその所在地にて特殊労働時間制を申請し、許可を取得しても、支社に適用することができず、支社がその登録地にて別途申請を行わなければならない。例えば、上海、北京、江蘇省。

(3)本社がその所在地にて特殊労働時間制を申請し許可を取得し、その許可書類に「支社を含む」という記載がある場合に限り、支社に適用される。例えば、広東省。