請負契約と売買契約の違いは?
商業活動において、商品供給の契約を締結する際、請負契約に該当するか、それとも売買契約に該当するかについて、通常当事者双方とも特に気にかけない。
しかし、双方間で紛争が発生し、当事者の一方が訴訟を起こし、訴訟の原因を明確にする必要があるとき、請負契約紛争を選択するか、それとも売買契約紛争を選択するかによって、訴訟の最終的な処理結果に大きな違いをもたらす可能性がある。その理由は、この2つの契約類型は異なるため、当事者の権利義務、立証責任が違い、また契約類型によって管轄権の規定も異なる(請負契約紛争は主に加工地の管轄を受け、売買契約紛争は主に納品地の管轄を受ける)からである。
当事者はできるだけ、自らの希望に沿った方向で契約条項を設定するために、請負契約と売買契約の区別を理解しておく必要がある。
以下では最高裁判所の判例及び実務観点から、2つの契約の区別を整理・分析する。
1、契約締結の目的、主要な義務の違い。『最高人民法院民事案件案由適用要点と請求権規範手引き』(2020)には、「請負契約と売買契約の区別は、請負契約は一定の仕事の完成を目的とする契約であり、双方当事者の権利義務が指す対象は主に一定の行為であることに対して、売買契約は所有権の移転を目的とする契約であり、双方当事者の権利義務が指す対象は一定の物であることだ。」と指摘している。言い換えると、請負契約において、目的物の所有権を移転することは請負人の主要な義務ではなく、ただ仕事の完成に伴う付随義務に過ぎない。例を挙げてみよう。(2018)最高法民申3805号判決書には、「案件に係る『ビジネス契約』及びその『技術付属ファイル』では、A社が資料の引渡し、人員の育成訓練、設備のトライ(ディバッグOR調整)及び非生産用建物の設計、生産用建物の設計、生産ラインのすべての設備基礎の土建の設計などの義務を負うことを約定しているが、A社の主な給付義務は「技術付属ファイル」の供給範囲で約束された生産ラインの交付にである。当該、主要給付義務は、『ビジネス契約』が性質上、売買契約に該当することを決定づける」と指摘した。最高裁判所は(2021)最高法民申5751号判決書には、「案件に係る契約では、目的物のリスク及び所有権は引渡し時点から甲へ移転される。即ち、約束した時間、約束した場所で引き渡しが行われるまでの目的物のリスクは乙が負担し、引渡し後の目的物のリスクは甲が負担することを約定した。双方の権利義務が指す対象は案件に係る設備であり、一定の行為ではない。」と指摘した。
2、目的物の特定性の有無。売買契約の目的物は通常、種類物で、共通性や国や業界の基準がある。請負契約の目的物は発注者の特別な要求に従い、発注者の需要を満たすために作られたもので、特殊な用途及び特定性がある。通常、発注者にしか使用できず、市場で流通することはない。仮に市場で売買することが可能だとしても、そのあるべき価値を失うことになる。(2019)最高法民再383号案件において、B社の設備設計・製造の技術が成熟化しており、B社からAへ販売した設備は、B社からその他の会社へ販売した設備の構造と類似性があるので、請負の性質に該当しない。
3、発注者は製品の製造過程に対して一定の管理を行うことができる。請負者は発注者の監督検査を受ける義務がある。売買契約の場合はこのような規定がなく、買主は、引き渡された目的物が品質要求を満たしているか否かを検査するだけで、製品の製造過程で監督検査を行う権利がない。(2019)最高法民再383号案件において、A社は「案件に係る契約が請負契約である」ことを主張する一方、「A社からB社への指令はなく、全てB社が技術支援を行っている。A社はB社に対して監督義務を負わない。」ことを認めたので、A社の主張は裁判所に却下された。類似のケースは他にもある。最高裁判所は(2021)最高法民申5751号及(2019)最高法民申4300号判決書において、「請負契約の発注者は請負人の業務に対して監督、検査、一方的に請負人に仕事を停止させる権利があり、請負業務全体に対して管理を行うことができる。」と同様の観点を強調した。
4、契約代金の性質が異なる。売買契約で約定された代金は目的物自体の価値であり、請負契約で約定された代金は請負人が特定の仕事成果を出した後に支払われる労働報酬である。(2016)最高法民申3342号判決書には、「当事者双方間で締結された「砂利加工契約」という名称、門源砂利場が砂利の加工を行い、契約単価が加工賃であるなどの契約内容などに基づき、発効判決は本案件を請負契約紛争と確定したことは不適切ではない。」と指摘した。
5、請負契約は「人的要素」がものを言う。請負契約の場合、発注者は請負人の資格能力、技術レベル、設備条件に非常に関心を持つ。売買契約の場合は、このような要求がなく、買主は主に目的物所有権の取得に関心を持ち、目的物の製造者、製造条件、製作過程には特に関心を持たない。
6、請負人は留置権と同時履行の抗弁権を有する。請負契約において、発注者が請負人に報酬や材料費などの代金を支払わない場合、請負人は法に従い出来上がった仕事成果に対して留置権、もしくは引渡しの拒否権を有する。もちろん、この法定権利は約定によって排除することができる。但し、売買契約において「入金後、納品する」などの約定がない限り、売主は留置権と同時履行の抗弁権を有しない。
7、最後に、請負人は請け負った仕事に対して秘密保持義務を負う。売買契約の場合は、このような規定がない。