債権回収のリスク防止及び対応メカニズム
現在の厳しい経済情勢の下、債権回収問題が顕著になっている。企業にとって、債権回収のリスク防止・対応をいかに行うか、いかに効果的に書面に基づく債権を実際に現金化し、迅速かつ最大限の債権回収を実現するかが重要な課題となっている。
今回は、筆者の実務経験に基づき、企業の債権回収メカニズム構築ためのキーポイントを参考として紹介する。
基本的な考え方としては、債権回収は個別に対応するのではなく、取引前のリスク予断・防止から、取引過程のリスク識別と把握、リスク発生時の適時かつ正確な対応まで一貫した完全なメカニズムが必要である。その理由は、取引前に、主体の取引相手及びその契約履行能力に対する認識違いが生じ、又は業績のために盲目的に契約を締結してしまった場合は、債権回収に失敗するリスクが非常に高い。取引過程で契約の約定を無視し、又は引渡しの証明や署名確認の記録などを保留しておかないと、債権回収の支障が生じる。債権回収が困難である場合に、直ちに有効な措置を講じなければ、最終的に貸し倒れや不良貸付になる可能性が高い。
段階に応じて、どのように債権回収のリスク防止・対応を行うか?
取引前に、取引相手の経営状況(経営範囲、業績など)及び信用状況を重点的に把握し、取引相手に係る訴訟の係属状況、取引相手が強制執行を受けていないか否か、高額消費を制限されていないか否か、信用喪失人員名簿に記入されていないか否かなどを確かめ、取引相手の経済的な実力、契約履行能力及び商業信用を的確に把握しておくべきである。
その上で、自らの最低取引条件(支払条件、違約責任など)を確定する。交渉において、自らの地位の優劣を踏まえて、有利な条件を柔軟に勝ち取るよう努力し、かつ契約に織り込む。契約条項の審査については、ここでは分析しない。契約履行段階においては、特に証拠の収集及び保存に重視すべきである。例えば、契約書、債務者署名・捺印済みの出荷・引渡し証明、入荷確認書、約定に重大な変化が生じる場合の補充協議書及び覚書、各種の決済伝票などの証拠。形式は、書面記録、メールやり取り、チャット履歴、書簡などが含まれる。実務において、企業内の法務部は契約の種類によって、証拠保留が必要なリストを作成しておくことで、業務部の案内とすることができる。
契約履行過程で、債権回収の実現前に、取引相手の経営状況の変化に注意を払い、回収不能の兆しを感じた時は、相手に別途担保を提供させるなど、すぐに相応の措置を講じる。有効な措置は、業界特徴及び取引パターンなどを考慮し、債権回収リスクの状況及び大きさによって、相応の対処及び審査許可権限を定める。つまり、どういう状況が発生したときに、どの部門がどのような措置を講じるかを明確にする。企業によって経済状況、業界、取引パターンなどが異なり、具体的な規則には大きな差異があるため、ここでは分析を展開しない。
最後、注意すべきこととして、債権回収の方式は、通常、催促状、弁護士書簡、保全措置、仲裁申し立て、訴訟、執行申し立て、破産手続きなどが含まれる。実務において、個別案件毎に、柔軟に一つ又は複数の方式を確定すべきである。例えば、債務者には保全又は執行の対象となる財産がなければ、当該債務者が第三者に対して期限到来の債権を持っているか否かを把握するとよい。当該債務者が第三者に対して期限到来の債権を持っている場合、債権者は当該債権に対して保全を申し立てることが考えられる。又、債務者の負債が多いにもかかわらず、市場価値がある場合は、債権者は債務再編、破産再生などにより最大限の債権回収を実現することが考えられる。