『総則編の適用における若干問題に関する最高人民法院の解釈』が2022年3月1日より発効

最高人民法院は2022年2月24日に『<中華人民共和国民法典>総則編の適用における若干問題に関する最高人民法院の解釈』(法釈〔2022〕6号)(以下『民法典総則編解釈』という)を公布し、2022年3月1日より施行することになった。

以下は商事契約に係る2つの主要条項について説明する。

1、「重大な誤解」に対する認定

民法典総則編解釈』第19条によると、「重大な誤解」とは、行為者が行為の性質、相手当事者又は目的物の品種・品質・規格・価格・数量などに対して誤った認識をもち、一般的な判断で、誤った認識が生じなければ、行為者が相応の意思表示をしないことを指す。

元『<中華人民共和国民法通則>の貫徹執行における若干問題に関する最高人民法院の意見(試行)』(法〔弁〕発〔1988〕6号)第71条の「行為者が行為の性質、相手当事者、目的物の品種・品質・規格・数量などに対して誤った認識をもち、行為の結果が意に背き、比較的多大な損失をもたらした場合、重大な誤解と認定することができる。」の規定と比べ、『民法典総則編解釈』第19条には、以下の3つの変化が見られる。

(1)「比較的多大な損失」という結果要件を削除した。

(2)「価格」を誤った認識の対象に組み入れた。

(3)「意に背く」の意味を「一般的な判断で、誤った認識を持たない場合は、行為者は相応の意思表示をしない」ことと一層明確にした。

特に注意すべき点は、『民法典総則編解釈』第19条では、行為者が「重大な誤解」を理由に民事行為の取消を請求することについて、「商習慣などに基づき、行為者は取消請求権を有しないと認定された場合は除外する」と除外規定が追加された点だ。

2、代理人が複数いる場合、一人の代理人による無断な代理権行使に対する処理

民法典総則編解釈』第25条には、「複数の委託代理人が共同で代理権を行使し、その内一人又は数人がその他の委託代理人と協議せずに、無断で代理権を行使した場合は、民法典第171条(無権代理)、第172条(表見代理)などの規定に基づき処理する。」と規定している。当該条項は、上述の法〔弁〕発〔1988〕6号第79条の「複数の委託代理人が共同で代理権を行使し、その内一人又は数人がその他の委託代理人と協議せずに実施する行為が被代理人の権益を侵害した場合は、関連行為を実施する委託代理人が民事責任を負う。」という規定に基づいたものである。

新旧の規定を比較したところ、代理人が複数いる場合、個別の代理人が無断で代理権を行使したことについて、法〔弁〕発〔1988〕6号第79条では、代理の性質は判断されず、責任帰属を規定していることから、大多数の代理は表見代理と認定される。『民法典総則編解釈』第25条では、代理行為の性質によって、無権代理と表見代理を区分していることから、代理行為の結果、責任帰属の認定も異なる。