定型約款に関する民法典の規定と実務上の留意点

「定型約款」とは、当事者が重複利用するために事前に作成しておき、契約締結時に相手方と協議しない条項を指す。電信サービス契約、保険契約、各種のネット通販での売買契約などが挙げられる。通常、定型約款の作成側は相対的な優越的地位にあり、権利を最大化し、義務・責任を最小限に抑えるため、相手方に過酷な又は不利な条項を設定することが多い。定型約款があまりにも過酷で、明らかに相手方に不公平であるとき、法律による介入が必要となる。旧『契約法』では、定型約款に対して制限規定を明確にしており、「覇王条項」(備考:当事者の利益を一方的に害する条項)を無効としていた。

2021年1月1日より、旧『契約法』に代わって『民法典』が適用されるにつれて、「定型約款」に関連するルールも変更した。

第一に、定型約款の提供側が注意又は説明の義務を履行すべき範囲の拡大。旧『契約法』第39条の「その責任を免除又は制限する関連条項に注意するよう相手方に促す」の規定を、『民法典』第496条では、「その責任を免除又は軽減するなど、相手方と重大な利害関係がある関連条項に注意するよう相手方に促す」に変更した。

それでは、「重大な利害関係がある関連条項」を如何に捉えるべきか?

『民法典契約編-理解と適用』には、「『民法典』第470条に例示される目的物、数量、品質、代金又は報酬、履行期限、場所・方式、違約責任、紛争解決策などは全て相手方と重大な利害関係がある関連条項に属する。」と規定している。但し、個別事案において、「重大な利害関係がある関連条項」に該当するか否かを判断するときは、契約や取引の種類、慣習、特徴などを総合的に考慮すべきである。事業者は、消費者に係る定型約款について、『消費者権益保護法』第26条では以下の規定がある点に注意すべきである。「事業者は経営活動において定型約款を使用する場合、商品又はサービスの数量、品質、代金や費用、履行期限、方式、安全注意事項、リスク警告、アフターサービス、民事責任など、消費者と重大な利害関係がある内容について注意を払うよう分かりやすい方法で消費者に促す。」

第二に、定型約款の提供側が注意又は説明の義務を履行しない場合の責任。旧『契約法』には明確な規定がない。相手方が定型約款を理解しているという前提下で、定型約款の提供側と関連内容に合意することを保証するために、『民法典』第496条では以下のように定めている。「定型約款の提供側が注意又は説明の義務を履行せず、これによって相手方が自身と重大な利害関係のある条項に注意を向けなかった、又は理解していなかった場合は、相手方は「当該条項が契約内容に入らない」ことを主張することができる。」 ここで注意すべきことは、「仮に定型約款の提供側が注意又は説明の義務を履行していなかったとしても、相手方が契約における関連条項に気づき、かつその意味を理解していた場合は、当該条項が契約内容に入らないと主張することはできない」ということだ(出所: 『民法典契約編-理解と適用』)。

第三に、『民法典』によると、以下のいずれかの状況に該当する場合は、定型約款は無効である。①民事行為無効の一般規定に合致する場合。②定型約款の提供側の責任を不合理に免除又は軽減し、相手方の責任を加重し、相手方の主要な権利を制限する場合。③相手方の主要な権利を排除する場合。上述のいずれかの状況に該当する場合に、仮に定型約款の提供側が注意又は説明の義務を履行したとしても、定型約款は無効となる。

注意すべきことは、旧『契約法』とは異なり、『民法典』では上述の②において制限条件として「不合理に」という言葉がつけ加えられたことだ。つまり、定型約款の提供側の責任を免除又は軽減し、相手方の責任を加重し、相手方の主要な権利を制限する定型約款が合理的であり、かつ定型約款の提供側が注意又は説明の義務を履行しており、さらにその他の定型約款無効の情状がない場合は、例外として当該定型約款は有効である。旧『契約法』における「画一的な処理方法」と比べ、『民法典』における変更後の規定のほうがビジネスニーズに応えると思われる。『民法典』の規定により、定型約款の受入側が「不合理」を立証しなければならないからである。

企業は『民法典』の上述の新ルールに基づき、定型約款を提供する場合は、合理的な方法により契約相手方に注意を促すように努めることが望ましい。具体的には以下のことが考えられる。①記号、色、太字、文字を大きくするなど、関連条項を目立つようにする。②リスクを回避するために、専門的な理解しにくい言葉、概念、法律結果に対して書面で説明を添え、相手方が関連条項の意味及び相応の法律結果を理解できるよう徹する。③『個人情報保護法』の発効後、企業は関連の規則制度や個人顧客との契約において個人情報の取得に同意するというような条項を盛り込むことが予想されるが、そのような場合、係る条項が定型約款に該当すること、またしっかりと注意・説明の義務を果たすことが大切である。