従業員がWechat「モーメンツ」内で共有したものについて、なぜ会社は巻き添えを食うか?
A社の営業マンである王さんがWechat「モーメンツ」内で共有したテキストと複数枚の写真には「Bブランドの共有モバイルバッテリーが発火した」写真とAブランドのモバイルバッテリーが合格品であることを示す検査報告書の写真が含まれていた。その後、B社は不正競争としてA社を訴えた。A社は、Wechat「モーメンツ」内での共有行為はあくまでも王さん個人の行為であり、A社はそれに関知していないと抗弁したが、最終的に裁判所は、B社の主張を認めた。
近年の司法実務において、Wechat「モーメンツ」、ミニブログなどに対する基本的な見方は概ね以下の通りである。セルフメディアとして、パーソナル・コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているほか、それらを活用して積極的に業務開拓を行う個人も珍しくない。さらに従業員に会社の広報宣伝内容を関連セルフメディアに掲載させる会社もある。従業員が会社の要求に従いセルフメディアに違法な情報を掲載し、他人の権利を侵害した場合、会社が責任を負うのは当然である。しかし、従業員が自らセルフメディアに情報を共有する場合は、「職務上の行為」にあたるか否かについては往々に議論がある。
この問題について、一部の典型的な裁判例は、会社が「職務上の行為」と判断する際の重要な参考となる。そのうち、上海市浦東新区人民法院が(2018)滬0115民初92656号事件において示した判断方法が代表的なものであると言える。当該事件の判決書において、裁判所は以下のことを指摘した。「Wechatのモーメンツは単なるパーソナル・コミュニケーションの場所ではなく、市場促進や情報伝播などの役割を果たす。行為発生場所の全体的な属性、具体内容、受益者、会社の意思に関わるかなどの要素を総合的に考慮した上で、職務上の行為にあたるか否かを審査し判断する。」つまり、職務上の行為に該当する否かを判断する基準は、会社が従業員に対して指示したかどうかだけではないということだ。行政法律執行及び司法実務からみて、従業員がセルフメディアという手段を通じて共有するなどの行為が法律に違反し、それによって会社が責任を追及された事案の中で、会社が従業員に対して指示をしていない、又は事情を知らなかったと抗弁することが多いものの、公開された判決書及び行政処分決定書を見てみると、それが認容されるケースは大変珍しい。
巻き添えを食うリスクを減らすために、会社は以下の対策を採るよう勧める。
まずは、従業員個人の行為について、セルフメディアに係る行為、相応の管理措置、罰則などを含むコンプライアンス管理体制を構築・完備し、定期的に教育を行うこと。
次に、従業員の仕事とプライベートの境界線をしっかり引かせること。仕事において、従業員に対して業務用のメールアドレスや企業版Wechatなどを使うよう求め、さらに定期的に従業員の仕事を審査・評価する。
最後に、従業員のセルフメディアを利用する必要がある場合は、事前にその内容の適法性などをチェックしておくこと。