「従業員シェア」、「プラットフォーム労働」とは?

近年、「従業員シェア」、「プラットフォーム労働」が流行しており、報道でもしばしば見られ、通常雇用コスト低減などに関わる話題となる。しかし、「従業員シェア」、「プラットフォーム労働」は、いったいどのような雇用形態であるのだろうか、一般雇用との違いは何だろうか、更にどのようなリスクが潜んでいるかなどについて十分な知識を持っていない企業も多いようである。

まずは、「従業員シェア」について話をしよう。2020年の年初、コロナの影響を受け、大部分の企業は操業停止となり、特に飲食、観光業界はいつ再開できるのか見通しがつかない状態になった一方、防疫用品の生産、物流などに携わる企業は人手不足が問題となっていた。この背景から、「従業員シェア」という雇用形態が現れた。具体的に言えば、人員過剰になった企業から、人手不足の企業へ労働者を一時的に異動させて、そこで勤務をさせる。受け皿となる企業は元の賃金基準に従い賃金、社会保険などの雇用コストを負担し、雇用企業はこれによって別途費用を徴収してはならない。2020年9月30日、『従業員シェアへの指導とサービスを進めることに関する人力資源・社会保障部弁公庁の通知』 (人社庁発〔2020〕98号)により、「従業員シェア」に係る労働関係、社会保険、労働災害、労働紛争などに対して手引となる規定が定められ、「従業員シェア」の政策上の根拠となっている。

従って、「従業員シェア」の実質は、労働関係を変更せずに、雇用企業が過剰な労働者を他の企業へ一時的に異動させ、関連コストを負担してもらう一時的な雇用形態である。コロナ終息後、閑散期や繁忙期がある企業は上述の政策に従い、類似の他社と業務提携を行うこともできる。

もう一つの「プラットフォーム労働」は、出前プラットフォームから生じた柔軟な「雇用形態」である。出前プラットフォームは主にアウトソーシング、区域加盟、プラットフォームでの仲介サービスに係る。アウトソーシングと区域加盟について、プラットフォームの所有者はアウトソーシング又は加盟を行う企業と業務提携協議書を結ぶため、労働者がアウトソーシング又は加盟を行う企業と労働契約を締結する。一方、プラットフォームでの仲介サービスについては、消費者と配送員が取引当事者となる。配送員は出前プラットフォームの所有者と労働契約を締結せず、個人の名義でプラットフォームにより「任務」を引き受け、任務完遂を前提として固定報酬又は歩合を獲得するので、実質的にサービスのアウトソーシングに該当する。実務において、オンラインプラットフォーム上の教師やツイキャスなど新業態の登場が「プラットフォーム労働」の発展を拡大させた。

国家発展改革委員会は2020年7月14日に『新業態・新パッターンの健康な発展を支持し、消費市場を起動し、就業拡大を促進することに関する意見』(発改高技〔2020〕1157号)を公布し、「オンラインプラットフォームのアウトソーシングにより自主就業・副業革新を奨励する」ことを明確にした。これが「プラットフォーム労働」の政策上の根拠となっている。

通常、個人所得税の節税のため、又は労働関係と認定されないように、サービスを提供する個人に対して個人商工業者として登記登録を行うよう要求するプラットフォームは少なくない。

「プラットフォーム労働」の特徴の一つは、個人(特に個人商工業者として登記登録を行った者)とプラットフォーム経由でサービスを受ける者との間に労働関係がないことである。そのため、実務において、雇用コストを低減する、又は関連リスクを回避するために、従業員との労働契約を解除したり、雇用しようとした新入社員に対して、個人商工業者として登記登録を行い、プラットフォーム経由で企業からの任務を引き受けさせる企業も多く見られる。但し、注意すべきことは、双方間に人事管理関係が存在し、従業員が企業の規則制度を遵守し、相応の福利待遇を取得していることを証明できる証拠がある場合は、事実上の労働関係が存在すると認定される可能性が高い点だ。