『行政処罰法』が2021年7月15日より施行
中華人民共和国第13期全国人民代表大会常務委員会第25回会議では2021年1月22日に『行政処罰法』改正案(以下『2021改正版』という)を可決した。改正後の『行政処罰法』は2021年7月15日より施行されている。今回の改正内容は多くあり、企業が特に注意を払うべきポイントは以下の通りである。
1、「初回の違法に対して行政処罰をしない」原則
『2021改正版』第33条には、「…..初回の違法で、被害が軽微で、かつ適時に是正した場合は、行政処罰をしなくてよい。…..」と規定している。注意すべきことは、
(1)初回の行政法律・法規違反行為に対して、行政処罰を必ずとも罰せられないわけではなく、行政機関は各要素を総合的に判断した上で、行政処罰を受ける場合もある。
(2)行政機関の判断に影響を及ぼす要素は2つある。①被害が軽微である。②適時に是正した。
実務において、「被害が軽微である」という要素が定量的な基準に欠ける場合は、法律執行の寛厳程度は一致しない可能性がある。一部の省・市では細分化・具体化した定量的な基準を公布している。例えば、2020年年初の『上海市市場監督管理行政処罰裁量基準(試行)』ではそれぞれの違反状況に対して、定量的な判断基準が定められている。関連企業はそれを踏まえて初歩的に判断することができる。
2、責任追及の期限
元『行政処罰法』第29条には、「原則として、違法行為が2年を経過して発見されなかった場合、遡及して行政処罰を行わない。法律に別途規定がある場合は除外する。」と規定されている。『2021改正版』では、「公民の生命の健康安全、金融の安全及び危害ある結果に及ぶ場合、責任追及の期限は2年から5年に延長される。」ことを定め、「原則として」という判断基準を明確にした。
3、「同一の違法行為に対して2回以上の行政処罰を行わない」原則
元『行政処罰法』第24条には、「当事者の同一の違法行為に対して、2回以上の過料の行政処罰を行ってはならない。」と規定されていた。当該規定を踏まえて、『2021改正版』第29条では、同一の違法行為が複数の法律規範に違反した場合に「同一の違法行為に対して2回以上の行政処罰を行わない」の原則を如何に適用するかが細分化・具体化され、「過料を科すべき場合、罰金額の高い規定により処罰する」ことを定めた。
4、「法改正によって処罰の変更があったときは、その軽いものによる」原則
『2021改正版』第37条では、「行政処罰を行うときに、違法行為が発生した場合の法律、法規、規則の規定を適用する。但し、行政処罰決定を下すときに、法律、法規、規則がすでに改正或いは廃止されており、かつ新しい規定により処罰が比較的軽い或いは違法とされない場合、新規定を適用する。」ことを新規追加した。実は2004年に最高人民法院が公布した『行政案件の審理における法律規範の適用問題に関する座談会紀要』(法[2004]96号)では、当該原則の適用に言及している。当該原則を法律に盛り込まれたことは、行政機関が「法改正によって処罰の変更があったときは、その軽いものによる」原則を貫徹することに役立つと思われる。