職業病管理に関するQ&A

『職業病予防治療法』第2条には、「職業病とは、企業、事業所、個人経営の組織等に属する労働者が業務の遂行に当たり、粉じん、放射性物質、その他有毒・有害因子に触れることにより患った疾病をさす。」と規定されている。つまり、使用者と労働契約を締結し、職業病に罹患する危険のある作業に従事する労働者は『職業病予防治療法』に基づいて、就職前、在職中、離職時に職業健康診断を受け、職業病関連待遇を享受するはずだ。但し、特殊な状況に対して職業病予防治療措置が実されるか否かについては、実務において多くの議論がある。

1:臨時に配置転換を受けた労働者は職業病管理対象者に該当するか? 

A1:『職業病予防治療法』第33条には、「締結済みの労働契約の期間内に労働者の持ち場または業務の内容に変更が生じ、労働契約の締結時に告知されていない職業病の危害がある作業に従事することになった場合、雇用者は、前項の規定により、労働者に誠実に通知する義務を履行すると共に、元の労働契約の関連規定の変更を協議しなければならない」と規定されている。

理由の如何を問わず、労働契約締結済みの労働者を職業病危害のある作業に従事させる場合は、持ち場又は業務内容の変更に該当し、職業病予防治療措置を講じなければならない。

2:派遣労働者は職業病管理の対象者に該当するか?

A 2:『職業病予防治療法』第86条には、「……派遣先は本法に規定する使用者義務を履行しなければならない。……」と規定されている。

派遣労働者が職業病危害のある作業に従事する場合は、派遣先は職業病予防治療措置を講じなければならない。

3:再雇用される定年退職者は職業病管理の対象者に該当するか?

A 3:定年退職者の再雇用については主に2つの状況に分けられる。

1)定年退職年齢に達しているが、定年退職手続を行っていない、又は法に従い都市・鎮労働者基本養老保険待遇を享受していない状況で、元の使用者に再雇用されて職業病危害に係る作業に従事する場合『人力資源・社会保障部の<労働災害保険条例>の執行における若干問題に関する意見(二)』第2条に基づき、使用者は法に従い労働災害保険責任を負う。従って、再雇用される定年退職者は職業病管理の範疇に収まる。

2)定年退職年齢に達しており、法に従い都市・鎮労働者基本養老保険待遇を享受している状況で、元の使用者又はその他の使用者に再雇用されて職業病危害に係る作業に従事する場合は、法律において「使用者はそれらの者に対して職業病予防治療措置を講じる」ことを強要されないので、実務において対処方針が異なる。具体的にA4の箇所で解説する。

注意すべきことは、労働者が定年退職で、職業病危害のある持ち場を離れる時も退職に該当するため、相応の健康診断の手配を行うべきである。

4:労務者は職業病管理の対象者になるか?

A4:この雇用形態に係る紛争において、労務者が労働関係を主張し、裁判所の判決により認められた場合は、労働契約関係として対処する。上述のA 3における2番目の状況と類似するケースもあり、実務において対処方針が異なる。一部の省・市では地方性規定により『職業病予防治療法』の適用を認めるか否かを確定する。例えば、『江蘇省工業企業職業健康監護監督管理弁法(試行)』(蘇安監規〔2011〕5号)第9条には、「企業は臨時工又は請負労働者に対して就職前の職業健康診断を手配し、かつその他の職業病管理措置を講じる。」と規定している。但し、大部分の省・市では明確な姿勢は示されておらず、関連部門は管理職責も異なり、意見も一致しない。例えば、上海市人力資源・社会保障局は口頭で「定年退職者など、企業と労務関係を構築した人員は労働法分野でいう労働者に該当せず、職業健康診断を行うか否かは双方が自主的に約定する。」と答え、上海市衛生健康委員会は「職業病管理の範疇に収まったほうがよい」とさらに保守的な立場を持っている。

よって、職業病危害のある作業は全ての労働者に対して不可逆的な人身損害をもたらす可能性があるため、職業病管理は労働関係に関わらず、持ち場事態を対象とすべきであると思われる。コンプライアンス・リスク管理の視点からも、労務者に対して必要な職業病予防治療管理を行うことが望ましい。