『上海市知的財産権保護条例』が2021年3月1日より施行

『上海市知的財産権保護条例』(以下『条例』という)は2020年12月30日に可決され、2021年3月1日より施行される。『条例』のポイントは以下の通りである。

1.知的財産権連席会議制度の構築

『条例』第4条では、市、区の人民政府は知的財産権連席会議制度を構築し、具体的な業務は同級の知的財産権部門が担当することを明確に規定している。又、連席会議の主要な職責は、以下の通りである。①本行政区域における知的財産権の保護を組織、指導、監督する。②知的財産権保護に係る重要な政策・戦略計画を研究・制定する。③知的財産権保護における重要な事項を総合的に推進する。

2.長江デルタ区域における知的財産権保護の特別メカニズム

『条例』第7条によると、長江デルタ区域の知的財産権保護の特別メカニズムは以下の3つを含む。①知的財産権保護に係る管理調整・情報共有を推進する。②立件の協力、調査・取り調べ、 証拠の相互承認、応急連動などに関するメカニズムを完備する。③知的財産権に係る違法行為に対して連合信用懲戒を実施し、知的財産権に係る法律執行の協同を図る。

3.技術輸出審査の原則的な要求

『条例』第16条では、知的財産権の海外への譲渡審査制度の完備について、以下のことを定めている。「市の知的財産権部門は市の経済情報化、商務、科技などの部門と共同で対外譲渡審査の手続・規則を制定・完備しており、知的財産権対外譲渡の秩序を規範化し、国の安全と重要な公共利益を保護する。外国投資者が国内企業を合併買収する場合の知的財産権対外譲渡に対して、本市の関連部門は国の関連部門と協力して審査する。」

4.知的財産権分野における信用体系の構築

『条例』第18条では、知的財産権分野における信用体系を構築し、主に3つのメカニズムからなることを規定している。①知的財産権分野の情報収集整理メカニズム。主にその知的財産権侵害行為により、自然人、法人、非法人組織が司法判決又は行政処分を受けた際の関連情報を公共信用情報に保管し、情報の共有を図ることを指す。②信用評価メカニズム。つまり、信用に基づいて等級、種類分けをし監督管理を行う。③信用を喪失した主体に対して法に従い懲戒を行う信用喪失懲戒メカニズム。

5.司法保護の傾向

『条例』第四章では、司法保護について、「当事者が公証、デジタルデータなど第三者による証拠保全の方式を活用して証拠を集め、固めることを奨励する。知的財産権侵害に対する賠償を強化し、故意に知的財産権を侵害し、かつ状況が深刻な場合は、法に従い懲罰的賠償責任を負わせる判決を下すべき。」などの姿勢を示した。

知的財産権権利者は、『条例』における知的財産権保護の関連措置を積極的に研究・活用するべきである。