特殊疾病に罹患した従業員に対し、24ヶ月の医療休業期間を与えなければならないのか
李さんは11年勤務していたA社を退職後、B社に転職してからまだ1年も経たないうちに、肺癌と診断され、そして病気休暇を取り始めた。B社は「医療休業期間は李さんの実際の勤続年数(6か月)による」と判断し、李さんは「特殊疾病であるため、医療休業期間は24か月とする」と判断し、これによって双方間で紛争が発生した。
特殊疾病の医療休業期間について、労部発〔1995〕236号には、「特殊疾病(癌、精神病、半身不随など)に罹患し、24ヶ月以内に全快しない場合は、企業及び労働主管部門の承認取得後に、医療休業期間を適宜延長することができる。」と規定しているが、当該規定については、意見の相違がある。一つの意見は、24ヶ月月以内に全快していない場合は、承認取得後に、医療休業期間を適宜に延長できる。24ヶ月の医療休業期間は制限を受けないので、直接適用できるというものである。もう一つの意見は、特殊疾病が24か月の医療休業期間の適用を受けるか否かは、承認を得られるか否かによるというものである。
実務において、各地の裁判所毎に意見は一致せず、主に以下の3つある。
1、24か月の医療休業期間を直接適用する(江蘇省、北京市、上海市、湖南省など)。江蘇省『江蘇省労働仲裁難問討論会紀要』(蘇労仲委〔2007〕6号)には、「特殊疾病(癌、精神病、半身不随等)に罹患した従業員に対して、勤続年数の長さにかかわらず、24ヶ月以上の医療休業期間を与える。」と規定している。北京市、上海市、湖南省等では規定を明文化していないが、判決において当該意見を示した(典型案例:(2020)京01民終1912号、(2016)滬0115民初36020号、(2019)湘民申686号)。
2、承認取得後に24ヶ月の医療休業期間を適用できる(浙江省、山東省、重慶市等)。浙江省『労働争議案件の審理における若干問題に関する解答(四)』の通知(浙高法民一〔2016〕3号)には、「これまでの実際の勤続年数及び本企業における勤続年数に基づいて医療休業期間を確定する。当該医療休業期間満了後もなお全快していない場合は、医療休業期間の延長を申請することができる。但し、上述の特殊疾病に罹患した従業員の医療休業期間は必ず24ヶ月であると意味するわけではない。」と規定している。山東省『労働人事争議案件の審理における若干問題の会議紀要』第17条には、「これまでの実際の勤続年数及び本企業における勤続年数に基づいて24ヶ月の医療休業期間を享受でき、当該医療休業期間満了後もなお全快していない場合は、医療休業期間の延長を申請することができる。但し、上述の特殊疾病に罹患した従業員の医療休業期間が必ず24ヶ月であると意味するわけではない。」と規定している。重慶市では司法案例において類似の意見を示した(典型案例: (2019)渝03民終1934号)。
3、これまでの実際の勤続年数及び本企業における勤続年数に基づいて医療休業期間を計算する。広東省『疾病の医療休業期間問題に関する返答』(粤労社函〔2004〕250号)には、「特殊疾病に罹患した場合も、医療休業期間は労部発479号文書の規定に従い執行する。つまり、これまでの実勤続年数及び本企業における勤続年数に基づいて医療休業期間を計算する。特殊疾病に罹患した場合は、少なくとも24ヶ月の医療休業期間を享受すると誤った理解をされてはならない。」と規定している。
以上のことから、間違った判断をしないために、企業は所在地の労働部門又は司法部門が特殊疾病の医療休業期間に対して制定した規定又は実務規則を把握し、事情に適した管理を行うべきである。