見落としがちな契約自動更新条項
通常、ディーラー契約、リース契約、知的財産権許諾協議書など、当事者が長期的な業務提携を求めるビジネス契約では、自動更新条項が定められている。自動更新条項は金銭、目的物引渡など実体の権利義務には、直接的な係わりがないため、企業に無視されることが多い。
だからこそ、自動更新条項の無視は今後紛争を引き起こす禍根となりうる可能性がある。(2019)京0108民初22059号案件では、J社とK社は『クラウドサービス協議書』を締結し、「J社はK社にクラウドサービスを提供し、クラウドサービス協議書の有効期間は1年とする。いずれか一方が、当該協議書の有効期間を延長する意向がなくなった場合は、期間満了3か月以内に相手方に対し書面で通知しなければならない。さもなければ、自動的に延長となるる。」などの条項が約定された。当該協議書の期間満了の半年以降後、K社はJ社に対し「クラウドサービスを使用しない」旨の通知を出したが、中途解除による違約金の支払いを拒否した。そのため、J社は裁判所に訴訟を提起した。最終的に裁判所は、「協議書の有効期間が自動的に延長する」と認定し、かつJ社の違約金請求の主張を認めた(双方で約定された違約金が高すぎるため、裁判所は要求に応じて金額を引き下げた)。自動更新条項を定めたことは、本件の購入者であるK社には明らかに不利である。
では、企業は如何にして自動更新条項を合理的に利用すべきか?
1、企業は自社のニーズに応じて、契約において自動更新条項を定めることの有利不利を判定すべきである。自動更新条項のメリットは、取引に係る大部分の実質的な条項(目的、履行方式、違約責任、紛争解決方法など)又は変数(リース契約において、自動更新後に賃貸料の引き上げは5%を超えないなど)を限定することができることである。自動更新条項のデメリットは、当事者の一方は取引を継続する意思がなくなったが、約定通りに相手方に通知することを忘れた場合、一方的な契約解除による違約責任を負うリスクがあることである。又、契約が依然として有効期間内であるため、買収、投資などによりデューデリジェンスを行う場合、企業は、なぜ契約の有効期間内の契約を履行しないかについて説明する必要がある。従って、企業は各要素を総合的に考慮し、全体的に自社に不利である場合、自動更新条項の適用は避けたほうがよい。
2、自動更新条項を必要とする場合は、「……契約の有効期間は自動的に延長する」のような表現を使わないように気をつけなければならない。その理由は、延長の回数が問題となり、つまり一回だけ延長するのか、それとも延長を繰り返すのかは不明確で、司法実務において不確実性がある。従って、延長の回数を「自動延長、今後同様」にするか、それとも「……契約の有効期間は自動的に1回延長する」にするかを、自社のニーズに応じて慎重に選択すべきである。
3、自動更新条項が既に定められている場合は、企業は「内部注意制度」を確立する。つまり、担当者を指定して契約期間満了日に注意を払わせる。契約を更新しない場合は、適時、契約で約定された方式通りに相手に知らせるべきである。契約で約定された方式で相手に通知しなかったが、気づいた後、直ちに知らせた場合に、当該通知が契約期間満了前に相手方に届きさえすれば、実務において、裁判所は基本的に公平性の原則に基づき、違約金の請求を認めない(如(2019)京0108民初22059号、(2019)黑0691民初170号、(2017) 滬01民终7833号等)。但し、取引のために十分な事前準備や投入が必要であるなど特殊な状況下で、(例えば、ネットワーク運営・保守のサービスを提供し、サーバーの借用期間を明確に告知した)、中途解除の時限を設けている場合は、通常、裁判所は損害賠償の請求を認めるとともに、違約金の請求を認める傾向がある。