『商標権侵害判断基準』が2020年6月15日より施行

『商標法』における商標専用権の規定が比較的原則的なものであるため、法律執行部門は個別案件に対して商標権侵害を判断するときに基準が一致しないことが多い。そのため、国家知的財産局は2020年6月15日に『商標権侵害判断基準』を公布した。『商標権侵害判断基準』は法律執行部門の具体的な判断基準となっている。その主要内容は以下の通りである。

1、同一商品、類似商品の判断基準

同一商品とは、商標権侵害と疑われる者が実際に生産?販売を行う商品の名称が、他人の登録商標の使用が認定された商品の名称と同じ商品を指すか、又は商品名称は異なるものの、機能、用途、主要原料、生産部門、消費対象、販売ルートなどが同じ、又は基本的に同一である場合、通常、関連公衆は関連商品を同一商品と判断する。 類似商品とは、機能、用途、主要原料、生産部門、消費対象、販売ルート等の点で一定の共通性がある商品を指す。

同一商品又は類似商品に該当するか否かを判断するときに、権利者の登録商標の使用が認定された商品と商標権侵害と疑われる商品を対比するべきである。

商標権侵害と疑われる商品と他人の登録商標の指定商品が同一商品又は類似商品に該当するか否かを判断するときに、現行の商標国際分類を参照する。

国際分類が及んでいない商品が同一商品又は類似商品に該当するか否かを判断するときに、関連公衆の一般認識に基づいて、商品の機能、用途、主要原料、生産部門、消費対象、販売ルートなどの要素を総合的に考慮する。

2、登録商標と同一又は類似する商標の判断基準

登録商標と同一の商標とは、商標権侵害と疑われる商標が、他人の登録商標と完全に同一、又は同一でなくても、視覚効果、聴覚的知覚において基本的に差異がなく、関連大衆が見分けにくい商標を指す。

商標権侵害と疑われる商標と他人の登録商標を比較した上で、以下のいずれかの状況に該当する場合は、他人の登録商標と同一すると認定することができる。

(1)文字商標:文字の構成、配列順が完全に同一である場合。登録商標のフォント、ローマ字の大文字?小文字又は文字の横縦配列方向を変え、登録商標とは基本的に差異がない場合。登録商標の文字、ローマ字、数字等の間の距離を変え、登録商標とは基本的に差異がない場合。登録商標の色を変え、登録商標の顕著な特徴に影響を与えない場合。他人の登録商標において本商品の通用名、図形、型番など顕著な特徴がない内容のみを追加し、 登録商標の顕著な特徴の反映に影響を与えない場合。

(2)図形商標は構図要素、反映形式など視覚において基本的に差異がない場合。

(3)文字?図形組合商標の文字構成、図形外観及びその配列?組合方法が同一で、商標が全体的視覚において基本的に差異がない場合。

登録商標と類似する商標とは、商標権侵害と疑われる商標と他人の登録商標を比較した上で、文字商標の文字の形状、読み方、意味が近似し、又は図形商標の構図、着色、視覚が近似し、又は文字?図形組合商標の全体的な配列組合方法と全体的視覚が近似することを指す。

商標が同一なのかか又は近似なのかかを判断するときに、権利者の登録商標と商標権侵害と疑われる商標を比較し、関連大衆の普通な注意力及び認知力を基準に、隔離観察、全体対比と要部対比の方法により認定する。

又、『商標権侵害判断基準』では、立体商標、組み合わせた色の商標、声音商標等新型な商標が同一又は近似するかの判断について規定を行った。

3、「混淆を招きやすい」の判断基準

「混淆を招きやすい」状況は2つある。(1)関連大衆に「案件に係る商品又はサービスが登録商標権利者から生産又は提供されたものであるという印象を与える)(2)関連大衆に「案件に係る商品又はサービスの提供者と登録商標権利」という認識を持たれる。(者が投資、許諾、加盟又は提携などの関係にある」という認識を持たれる。

「混淆を招きやすい」状況に該当するか否かを判断するときに、以下の要素を総合的に考慮する。(1)商標の近似状況。(2)商品又はサービスの類似状況。(3)登録商標の顕著性及び知名度。(4)商品又はサービスの特徴及び商標使用の方式。(5)関連大衆の注意及び認識の程度。

4、商標権侵害の具体的な行為

『商標権侵害判断基準』によると、下記のいずれかの状況に該当する場合は、商標権侵害行為になる。

(1)自ら登録商標を変更し、これによって同種の商品又はサービスにおける登録商標が同一又は近似し、かつ混淆を招きやすい場合。

(2)複数の登録商標を組み合わせて使用し、これによって他人の同一商品又はサービスにおける登録商標と同一又は近似し、かつ混淆を招きやすい場合。

(3)企業名称における商号を同一商品又はサービスにおいて強調して使用する場合。

(4)便乗を目的に色を付着させ、加工請負において商標権侵害に係る商品を使用する場合。

(5)販売活動において商標権侵害に係る商品を贈呈する場合。

(6)市場主催者、展覧会主催者、売場賃貸人、電子商取引ウェブサイトが商標権侵害行為に協力する場合。

(7)他人の登録商標と同一又は類似する文字をドメイン名として登録し、かつ当該ドメイン名を通じて電子商取引などを行う場合。

5、販売業者の責任免除規定の具体化

『商標権侵害判断基準』によると、販売業者の責任を免除する場合は、以下の3つの要件を同時に満たす必要がある。販売業者は、その販売する商品が商標専用権を侵害したことを知らない。販売業者は関連商品の合法的な取得を証明できる。販売業者は関連商品の提供者を説明できる。

又、『商標権侵害判断基準』では、先行権抗弁における「一定の影響がある商標」及びその元の使用範囲、商標権侵害案件調査処分の中止状況、5年以内に2回以上の商標権侵害行為を行う場合の認定、権利者の識別などについて規定を行った。