吸収合併された契約相手方との取引を拒否できるか

A社とB社が売買契約を締結した後まもなく、B社はC社に吸収合併された。A社とC社は、かつてもめごとが発生したことがあるため、A社はC社と取引を行いたくない。、この場合、A社はC社との取引を拒否することができるか?

『会社法』第174条には、「会社が合併する時、合併の各当事者の債権及び債務は、合併後の存続会社又は新設会社が承継しなければならない」と規定している。又、『契約法』第90条には、「契約締結後に当事者が合併した場合は、合併後の法人又はその他の組織が契約の権利を行使し、契約の義務を履行する。」と規定している。従って、原則として、A社とC社は契約の履行を継続するものとし、いずれかの一方が取引を中止する場合は契約違反となる。

特に注意すべきことは、仮に吸収合併行為には、株主会決議が下されなかったか又は債権者への通知や告知を行わなかったという瑕疵があったとしても、契約相手方及び関連債権者の利益が侵害されない限り、吸収合併行為は依然として合法かつ有効である((2016)桂12民初2号判決書参照)。

但し、例外もある。以下のいずれかの状況に該当する場合は、A社はC社との取引関係を解除することが可能となる。

合意による解除。例えば、文頭の事案において、C社もA社と取引したくない場合は、双方は意見が一致しているため、合意の上で、契約を解除することができる。

法定解除権の行使。例えば、C社が『契約法』第94条の状況のいずれかに該当する場合(不可抗力、当事者の一方が債務を明らかに履行しない、当事者の一方が債務の履行を遅滞し、催告を受けた後もなお履行しない、又は契約の目的が達成できないなどを含む)は、A社は法定解除権の行使により、C社との契約関係から脱却することが可能。

A社の主となる契約権利が侵害される又はその恐れがある。例えば、C社がB社を吸収した後、経営方針の変更及びA社向けの製品の生産ラインの切り替えにより、A社の主たる契約権利が実現できない恐れがある場合には、A社が契約の解除を主張することは合理性がある。但し、殆どの案件においてこのような状況はない。(このような案件は稀である)

例えば、(2014)烏中民四終字第1093号事件において、2011年、賃借人のQ社は賃貸人のW社に対し、「Q社がX社に吸収合併され、今後、X社が元の賃貸借契約通りに賃借料を支払う」ことを通知した。2013年、W社は、Q社の営業許可証は2010年には既に取り上げられており、2013年に抹消登記を行っていたことを発見し、詐欺を理由に賃貸借契約の解除を請求した。最終的に裁判所は、「W社が賃貸料を受け取るという主たる契約権利が侵害されておらず、『契約法』第94条における法定解除の状況に該当しないため、W社が契約相手方を選択する権利が剥奪されたことを理由に、契約を解除するという請求は成立しない。」と認定した。

又、『契約法』によると、不定期賃貸借、請負、贈与、技術開発又は委託契約など、一部の特定種類の契約について、双方又はそのうちの一方当事者は、任意解除権を有する。もし文頭事案においてA社が法定の任意解除権を有している場合、一方的に契約を解除することができる。但し、任意解除権を行使するには一定の条件を満たス必要があり、又相手方に損失をもたらす場合、相応の賠償責任を負わなければならない。

最後に、会社が取引相手方に不安を感じる場合の予防措置としては、契約締結時に契約主体の変更による結果を明確に約定することが考えられる。例えば、「いずれか一方の法定代表者の変更、実質的支配者の変更、合併又は分割などが発生した場合は、相手方は一方的に契約を解除する権利がある。」ことを約定しておくと良い。