従業員が行方不明になった場合の対処策

2016年12月、従業員董さんが行方不明になった。その数日後、会社は無断欠勤を理由に一方的に労働契約を解除した。2017年4月、董さんは精神分裂症と診断されたが、2016年8月に発症の兆しがあった証拠がでてきたため、董さんの娘は、会社の行為が不当解雇に該当することを主張し、最終的に上海市高級裁判所は再審を経て、不当解雇と認定した((2018)滬民申2313号)。

実務において、使用者の規則制度には、「無断欠勤が一定の日数に達する場合、使用者は一方的に労働契約を解除することができる。」という規定がある場合、従業員が行方不明になった場合、使用者は当該規定を適用して処置することが多い。通常、規則制度が民主的手続を行われており、かつ使用者が手続通りに実施した限り、使用者による違法解除とは認定されない。

複数の判例から見て、使用者は無断欠勤を理由に、行方不明になった従業員を解雇する場合、以下の2点に注意すべきである。

第一に、催告の重要性。使用者が規則制度において催告の規定があったとしても、実際に催告しなかった場合、裁判所は不当解雇と直接認定することができる(例えば、(2018)粤01民終8746、8747号事件)。法律法令では、従業員が行方不明になった場合における使用者の催告義務が定められていないため、使用者の規則制度には催告に関する規定がなければ、裁判所は催告の未実施を理由に、不当解雇と直接認定することはない。但し、裁判所は使用者の管理職責から、使用者の処理が不適切だと認定する可能性もある。例えば、(2016)滬01民終4969号事件において、使用者が従業員の私用休暇申請を承認しないことは特に問題ないが、職場復帰を催告せず、事後も適時に処分を下すこともなく、従業員の職場復帰1か月後に処分を行ったため、裁判所に不当解雇と認定された。

第二に、特殊状況の有無。主に2つの特殊状況に係る。

①疾病。文頭の事案において、裁判所は、「精神分裂症に潜伏期があり、使用者が病状を無視して直接解雇したことは不当解雇に該当する」と認定した。又、従業員が突然発病し、又は重大な疾病により病気休暇を適時申請しなかった場合について、使用者は無断欠勤を理由に労働契約を解除する場合、不当解雇と認定される可能性がある。

②配置転換。例えば、(2016)粤01民終5315号案件において、従業員が配置転換を受け入れず、その後行方不明になり、使用者は当該従業員が新たな職場に務めなかったため、無断欠勤に該当することを理由に解雇した。しかし、最終的に裁判所に不当解雇と認定された。

  以上のことから、従業員が行方不明になった場合、使用者は無断欠勤を理由に処分を行うことが考えられる。しかし、処分を行う時に、ウィーチャット、ショットメッセージ、電子メールなどにより適時に催告を行い、相応の証拠を保存しておく必要があると思われる。又、疾病等の特殊状況がある場合は、使用者は人間性を尊重して取り扱うべきである。なお、配置転換による行方不明の場合の対処策については、法律記事スクラップ第32号の「従業員の怠業について、企業はいかに対応するべきか?」参照することを勧める。