頻繁に遅刻する従業員を解雇できないか
付さんは入職後、10か月の間に70回以上の遅刻した。会社は、付さんが規則制度に著しく違反したとして労働契約を解除した。それに対し、付さんは労働仲裁を提起した。裁判所は、「会が、付さんの頻繁な遅刻を知りながら、『就業規則』に沿った処分を行っていないことから、勤怠管理が従業員のパフォーマンスを評価する基準ではない」と判断し、最終的に「会社による労働契約の違法解除」と認定した(詳細は (2018)滬0104民初14518号を参照する)。
当該判決を見て、人事管理の方々は「一方的な解雇って、大変!」とイライラするだろう。
『労働契約法』第39条第2項によると、労働者が使用者の規則制度に著しく違反した場合、使用者は労働契約を解除することができる。但し、規則制度において、特定の行為を「重大な違反」と定めることは問題にならないか。
これについて、『民事審判指導と参考』総第49輯において、最高人民法院民一廷は、「重大な違反に該当するか否かを判断するとき、単に規則制度の規定を基準とするのではなく、規則制度の制定手続・内容が現行の法律法規、政策、司法解釈、双方の労働契約の約定に相違があるか否かを総合的に考慮するべきである。」と判断する傾向が見られる。司法実務において、規定の合理性、労働契約解除前に使用者が労働者に対し必要な注意・教育を行ったか否かが労働契約解除の適法性を判断する重要な要素となっている。
「遅刻」について、多くの会社の就業規則では、「遅刻回数が3回になった場合は、書面で警告を行う。」、「書面警告を3回受けた場合は、会社は一方的に労働契約を解除することができる。」というような規定がある。通常、書面警告が戒め、教育の役割を果たせると理解されているため、上述の規定の合理性は認められる。従って、一般的に、使用者が段階的に処分を厳しくし、最終的に労働契約を解除するというやり方であれば、違法解除と認定されない。
実務において、使用者による一方的な労働契約の解除が失敗となる原因は主に以下の通りである。
1、遅刻に対する処分の内容又は基準が不合理である。例えば、(2019)新01民終3981号事件において、裁判所は以下のように認定した。「30分以上の遅刻又は早退は半日の無断欠勤とされる。3時間以上の遅刻又は早退は1日の無断欠勤とされる」という使用者の規定は労働者の責任を拡大し、合理性を失い、労働関係解除の根拠にならない。
2、「3回の書面警告を行った場合は解雇することができる。」という規定により不意打ちをくらわし解雇する。例えば、使用者が労働者の頻繁な遅刻を長期的に放任し、突如3回の書面警告を続けざまに行い、最終的に一方的に労働契約を解除する場合は、リスクが大きい。
3、タイムカードの不正打刻により頻繁に遅刻する行為について、使用者は行為が悪質だとして、段階を飛び越えて処分することが多いが、この場合、リスクが伴う。例えば、(2017)粤03民終477号事件において、使用者の『就業規則』では、「従業員が契約期間内に同じ規律違反行為を2回行う場合は、会社は情状に応じて解雇に至るまで処分を加重する。」と定めた。使用者は、労働者がタイムカードの不正(打刻)を2回したことを発見した後、一方的に労働契約を解除した。裁判所は、当該使用者が1回目と2回目のタイムカードの不正打刻に対して段階的に処分を厳しくしなかったことを理由に、使用者による労働契約の違法解除と認定した。従って、タイムカードの不正打刻を利用する遅刻について、使用者は2つの面でリスクを低減することが考えられる。①規則制度において「タイムカードの不正打刻は信義誠実原則違反として一方的な解雇の事由になる」ことを定める。通常、司法機関は信義誠実原則違反による解雇を認めることが多い。②規則制度に上述の規定がない場合は、『労働法』第3条の「従業員は労働規律及び職業道徳を遵守しなければならない。」及び『労働契約法』第3条の「信義誠実原則」を解雇の事由とする。