『民事訴訟証拠に関する最高人民法院の若干規定』改正案が2020年5月1日より施行
『民事訴訟証拠に関する最高人民法院の若干規定』は施行から20年近くなる。司法実務にでの新しく出てくる状況、例えば、当事者が証拠規則を悪意に利用する、又は鑑定や電子データなどの普及などについて、有効に対処できないところも多い。そのために、『民事訴訟証拠に関する最高人民法院の若干規定』改正案(以下『2019年改正版』という)は、最高人民法院審判委員会が2019年10月14日に可決し、2020年5月1日より施行する。
今回の改正は全面的な改正であるが、紙幅に限りがあるため、新規条項の一部をピックアウトして紹介する。
1、当事者の消極的な応対に対する規制の強化
審判における難題として、当事者が出廷や尋問を拒否し、又は出廷したものの、証明の対象となる事実を承認も否認もしない場合は、裁判官が、事実を直接認定するためには根拠が足りないようである。この問題を解決するために、2019年改正版では2つの条項を新規追加した。
(1)第6条では、必要的共同訴訟において、一部の当事者が事実を自認し、他の当事者が承認も否認もしない場合は、自認と看做されると規定している。
(2)第66条では、当事者が正当な理由なしに出廷しない、又は保証書の署名や読み上げを拒否する、又は尋問を受けない場合、対象事実を証明できるその他の証拠がない限り、裁判所は当該当事者に対し、不利な認定を下すと規定している。
2、電子データの証拠法上の取り扱いルールの明確化
2018年最高人民法院が公布した『インターネット裁判所案件審理の若干問題に関する最高人民法院の規定』では、電子証拠の適用に関連する全面的な規定がある。その規定の適用範囲は、インターネット裁判所が審理する事件に限定されているので、他の事件に適用されるか否かは明確でない。2019年改正版では、電子証拠について、全面的な規定を定めている。
(1)第14条では電子データの種類を明確化。そのうち、インスタントメッセージなどインターネットアプリケーションサービスの通信情報が含まれる。
(2)第15条では電子データの原本に対する要求を明確化。電子データの作成者が作成した原本と一致する副本、或いは電子データから直接派生した印刷物又は表示・識別できるその他の出力媒体は、電子データの原本と看做される。
(3)第93条では電子データの真偽を判断する7つの要素を明確化。電子データの作成、保存、伝送が依存するコンピュータシステムのハードウェア・ソフトウェア、保存・伝送・取出の完全性・信頼性、取引活動における電子データの正常な作成・保存などを含む。
(4)第94条では電子データの真実性が認められる5つの状況を明確化。その内、以下の2つの状況に特に注意を払うべきである。(1)電子データを記録・保存する中立な第三者が提供又は確認した場合。(2)当事者の約定方式により保存、伝送、取り出す場合。