簡単な事例で読み解くCOVID-19 と不可抗力の関係

COVID-19の感染拡大に伴い、インターネット上では、COVID-19が不可抗力に該当するか否か、如何に免責を主張するかなどの問題をめぐり、投稿が相次いでおり、その内容も法理、条文、判決など、あらゆるものが溢れている。但し、多くの企業にとって、最も気になることは、「当社」が不可抗力を主張できるか、如何にして主張するか、主張したらどうなるかという問題である。

複雑な問題を簡単な事例で説明しよう。3分間で理解できるQ&A形式。

Q1:「当社」の場合、不可抗力を主張できるか

A1まずは次の三つの質問をもって自問自答してみよう。①契約締結時に疫病の発生を予測できたか?②疫病が契約に及ぼす影響は避けられるか?③客観的に疫病の影響を克服できるか?

いずれも答えが「NO」である場合は、通常、不可抗力を主張できる。

以下では、三つの事例を挙げてみようか。

例1 2020年1月10日に武漢のA社と上海のB社の間で、A社がエンジニアを上海に出向させ、設備修理することを約定した。しかし、1月24日より始まった武漢の封鎖措置により、エンジニアは約定通り上海に行けなかった。この場合に、間違いなくA社は不可抗力を主張できる。

例2 状況を変えたらどうなるだろうか?例えば、2020年1月10日にA社とB社、A社が2月6日に貨物代金10万元を支払うことを約定したが、A社は約定通りに支払わなかった。その場合に、不可抗力を主張できるか?この場合は、質問2と質問3の問いに、「NO」と答えられないだろう。支払義務の履行について、通常、裁判所は不可抗力に関する主張を認めない。

例3 状況を再度変え、例2の状況に、1月末にA社の財務責任者と総経理が新型コロナウイルスに感染したと確認され、入院治療を受けていたことを加えて考えたらどうなるだろうか?この場合に、質問2と質問3の問いについて、「NO」と答えられるため、A社は不可抗力を主張できる。

Q2:如何にして不可抗力を主張するか?

A2:不可抗力を主張する場合は、主に3つのステップに分けられる。

(1)相手側に通知する。要するに、何が発生したか、契約履行にどんな影響を及ぼすか、どのような損害拡大防止対策を取るかなどを早期に相手側に伝える。契約に約定がある場合は、約定された期限又は方法に従うべきである。

(2)損害拡大防止措置を取る。例えば、例1において、蘇州にA社の事務所がある場合は、A社は蘇州事務所のエンジニアに対し、業務再開後に速やかにB社に出向き、設備修理を行うように手配すべきである。

(3)不可抗力事態発生の証明書を提供する。不可抗力事態発生の証明はいくつかの方法があり、選択できる。

ア、政府文書又はWebサイトのスクリーンショット。例えば、例1において、A社は武漢の封鎖措置及び業務再開延期に係る政府の決定を提供することができる。

イ、公証機関から発行される不可抗力事態発生の公証証明。

ウ、国際貿易に係る場合、最近では、多くの企業が、中国各地の国際貿易促進委員会分会に不可抗力事態発生の証明書を申請している。また、国際貿易促進委員会による不可抗力事態発生の証明書は無料で提供される。

Q 3:不可抗力の主張が認められたらどうなるのか?

A3契約解除、又は契約違反責任の減免

(1)疫病の影響を受け、契約の目的を達成できない場合は、契約を解除できる。例えば、レストランに予約した誕生日宴会、「日本のお花見」をテーマとした旅行などのような契約はその適例である。

(2)殆どの契約において、不可抗力に関する主張が認められた場合は、違約責任は減免される。「軽減」それとも「免除」になるかは、下記の3つの質問をもって自問自答したら分かると思われる。

第一に、相手側に適時に通知したか。例えば、例1において、封鎖措置により、A社がエンジニアをB社に出向させ設備修理を行わなかったことについて、B社が約定通り、取引先のC社に通知しなかったため、C社は部品供給不足により生産停止となった。この場合、通知が遅れたことによる損失は、B社が負担すべきである。

第二に、損害拡大防止措置を取ったか。例えば、A社が蘇州事務所のエンジニアに対し、業務再開後に直ちにB社に設備を修理するよう手配することは、損害拡大防止対策と見なされる。

第三に、疫病により契約が全て履行不能になるか、それとも一部履行不能になるのか。例えば、B社は武漢倉庫から在庫品を出荷できない場合、蘇州倉庫に在庫品があるにもかかわらず、出荷しなかったら、違約責任の免除を主張できない。

附:根拠となる法律法令司法解釈、観点のインデックス

  • 『契約法』第94条、第117条、第118条、第119条
  • 最高人民法院による『SARS予防制御期間に人民法院の審判・執行業務を遂行することに関する最高人民法院の通知』(法〔2003〕72号)
  • 2003年北京市第二中級人民法院課題チームが発表した『SAR事件が不可抗力を構成する場合の免責事由に関する案件の正確な処理』
  • 上海市高級人民法院による『新型コロナウイルスに係る案件の法律適用問題に関するQ&A』