労働契約合意解除の留意点

華為会社の元従業員の李さんは労働契約期間満了し、2Nの経済補償金を得て退職したが、その1年後、ゆすり取り?強要の疑いで逮捕され、251日間勾留された後、無罪放免になった「華為251事件」が最近話題になっている。青島市の楊さんは退職後に、「会社から詐欺?脅迫を受けた」ことを理由に労働仲裁を提起し、「会社が経済補償金を支払う」ことを求め、関連証拠を提出した結果、最終的に第一審と第二審の裁判所に認められた((2017)鲁02民終4433号)。

上記の2件は労働契約合意解除による紛争事件である。前者においては、使用者が従業員のゆすり取り?強要を証明しようとし、失敗になってしまった。後者において、従業員が詐欺?脅迫を事由に使用者を訴え、勝訴した。いずれも使用者にとって、望ましい結果ではない。

労働契約合意解除の場合に、不適切な行動によるリスクを回避するために、使用者はどのようにすれば良いのか?

『労働争議案件の審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈(三)』第10条によると、労働者と使用者が労働契約の解除又は終了手続、賃金報酬?残業代?経済補償金又は賠償金の支払について締結した協議書は、法律、行政法規の強行規定に違反せず、かつ詐欺、脅迫、他人の弱みに付け込む(他人を陥れる)などの状況に該当しない場合、有効と認定される。当該協議書が重大な誤解を招き、又は明らかに公平性に欠き、当事者が協議書の取消を請求する場合は、人民法院はそれを認める。

上記の規定から見て、労働者と協議するときに使用者は下記の3点を把握しておくべきである。

まず、法律、行政法規の強行規定に違反しないこと。例えば、労働者と協議するときに、「社会保険の主張を放棄する」ことを約定し、労働者がそれを理由に労働仲裁又は訴訟を提起する場合、使用者は敗訴となる可能性が高い。社会保険費を納付することは使用者の法定義務に該当し、約定により排除してはならないからである。

次に、詐欺、脅迫、他人の弱みにつけこむ(他人を陥れる)などの言行を回避すること。『〈中華人民共和国民事訴訟法〉の適用に関する最高人民法院の解釈》(法釈〔2015〕5号)第109条の規定によると、当事者の詐欺、脅迫、結託などに対する事実証明について、人民法院はそれらの事実の可能性を確信し、合理的な疑いを排除できる場合、それらの事実が存在すると認定する。

実務において、一部の判決(例えば、(2015)滬一中民三(民終字第121号、(2018)粤13民終5108号等)では、「労働契約合意解除において、公民及びその親族の生命健康、栄誉、名誉、財産などに損害をもたらし、又は法人の栄誉、名誉、財産などに損害をもたらすことを事由に、相手に本来の意思に背く行動をするよう強制した場合は、脅迫と認定してよい。」と脅迫の判断要素を例示した。

詐欺について、使用者は以下のポイントに注意すべきである。第一に、故意に労働者に対し誤った法律説明を行わないこと。例えば、(2017)鲁02民終4433号事件において、使用者は労働者に対し、「期間満了に伴う労働契約終了の場合に、会社は経済補償金を支払わない」ことを通知した。裁判所は他の事実を踏まえて、「労働者が詐欺を受けた」と認定した。第二に、労働者に通知した後、通知通りの条件を厳格に執行すること。例えば、労働者に対し「現在解約する場合は、会社が2Nの経済補償金を支払う。2週間後に解約する場合は、会社がN+1の経済補償金を支払う。」ことを告知した後、経済補償金の基準をN+1以上に引き上げる場合、詐欺と認定される可能性がある。第三に、協議の上、労働者が法定基準以下の経済補償金を認める場合は、協議書に脅迫と見なされる可能性がある表現を使わないこと((2017)遼0291民初2336号)。