早期退職制度の実行可能性及び留意点
企業の存続期間が長くなるにつれて、定年退職年齢に近づく従業員が徐々に増加している。これにより起こる問題が二つある。一つは、それらの従業員の一部は、スキルの成長が停滞し、精力減退が起きやすくなること(無気力になること)。もう一つは、係るポジションがそれらの従業員により占められているため、若者世代が実務スキルを鍛えるチャンスが乏しいことである。このような状況下で、より多くの企業は、早期退職制度の構築を考えているようだ。
実務において、早期退職は大きく分けて3つのパータンに分類される。(1)合意の上で労働契約を解除し、企業が補償金を一括して支払う。(2)定年退職年齢に近づく人員を退任させ、労動提供なしに、企業が毎月一定割合(例えば80%)の賃金を支払う、また当該人員のための社会保険料及び住宅積立金は継続し納付する。(3)定年退職年齢に近づく人員を退任させ、顧問など補佐役とする。
企業が『労働契約法』第36条に従い、上記の3パータンの何れかについて従業員と合意に達した場合、又は『労働契約法』第4条に従い、上記のパータン(2)又は(3)について規則を定めて民主的手続を行った場合、対象者を早期退職させることは可能である。
しかし、早期退職制度を構築するにあたって、以下のポイントに注意する必要がある。
第一に、早期退職制度において、早期退職の対象となる者の職務、年齢、申立方法などを明確にすること。
第二に、合理性から見て、早期退職の対象者にパータンの選択権を与えること。実務において、国有企業が従業員に選択権を与えなかったものの、裁判所が国有企業の規則制度を認めたケースはある((2015)滬一中民三(民)終字第1275号等参照)。但し、注意すべきことは、そのようなケースは、裁判所は『国有企業余剰従業員安置規定』(国務院第111号令)を法的根拠として判決が下されている。外資企業又は民間企業が国有企業のやり方をまねる場合、裁判所に認められない可能性が高い。
第三に、パータン(3)に係る賃金待遇について、早期退職は『労働契約法』第40条における不適任に該当しないので、企業は配置転換を行う際に、賃金待遇を下げる場合、対象者の拒否又は不満を引き起こす可能性があるため、原則として賃金待遇は調整しないよう勧める。一方で、配置転換後の職務に応じて人事考課の内容や基準は設定すべきである。
第四に、人事面談をしっかりと行い、関連資料を保存する。人事部門を任された担当者は早期退職対象者と積極的に友好的な態度で面談を行い、早期退職対象者の真意を把握し、早期退職対象者が適切に選択できるよう導く。又、リスクを未然に防止するために、面談資料を保存するとともに、早期退職対象者が選んだ選択又は条件に納得した際の署名を保存する。