昼休みに発病・負傷した場合は、労災になるか?
昼休みにA社従業員の楊さんは業務操作証を取るために会社を出て、帰社途中に交通事故に遭い負傷した。楊さんが労災認定を申立した結果、人力資源・社会保障局は「労災と認定されない」という決定を下した。その後、第一審の裁判所も第二審の裁判所も人力資源・社会保障局の決定を認めた([2017]滬01行終11号判決書参照)。偶然にも、B社従業員の呉さんも昼休みに突然発病し、病院に運ばれ処置を受けたが死亡した。人力資源・社会保障局は「労災と認定される」という決定を下した。B社は決定が不服だと提訴したものの、上海市浦東新区裁判所は労災と認定した([2013]浦行初字第281号判決書参照)。
上記の二つの事件において、負傷と発病は同様に昼休みに発生したが、なぜ労災認定の結果が異なるか。
『労災保険条例』第14条と第15条では、労災に該当する状況及び労災と看做される状況を列挙した。通常、昼休みに発生した傷病について、従業員が労災に該当することを主張する法的根拠は、主に二つがあり、その一つは当該条例第14条第(1)項(「勤務時間中に勤務場所内で業務上の事由により事故に遭い負傷した場合」)であり、もう一つは、第15条第(1)項(「勤務時間中に職場で突然発病して死亡し、又は48時間以内に救急措置が実施されたにもかかわらず死亡した場合」)である。
第14条第(1)項では、①勤務時間中、②勤務場所内、③業務上の事由という3つの要件を定めており、第15条第(1)項では、①勤務時間中、②職場という2つの要件を定めている。
先ずは、昼休みが勤務時間に該当するか否かについては実務意見が一致していない。殆どの裁判所は、昼休みは、従業員が自由に利用できる時間帯であるため、勤務時間に該当しないという観点を採っている(例えば、[2017]滬01行終11号、[2016]粤行申1138号、[2018]京03行終918号等)。少数の裁判所は、『労災保険行政案件の審理における若干問題に関する規定』における「勤務時間の合理性」を根拠に、昼休みは勤務時間の合理的延長に該当すると判断している。例えば、[2013]浦行初字第281号判決書では、昼休みは休憩に該当することを指摘した。又、[2015]一中行終字第2077号判決書では、負傷は昼休みから午後の始業時点までの過程に発生したもので、勤務時間の合理的延長に該当することを指摘した。
次に、勤務場所の判断基準が比較的明確であるため、負傷や疾病の発生地が勤務場所に該当するか否かについては、議論は少ない。例えば、[2015]一中行終字第2077号事件において、裁判所は、従業員が勤務先のオフィスビルの地下駐車場で蹴羽根をする場合は、勤務場所内と看做されないと指摘した。
又、業務上の事由による負傷に該当するか否かについては、個別事件の判断にバラつきがある。『労災保険行政案件の審理における若干問題に関する規定』第4条では、立証責任の転換を採っており、「従業員が業務時間内に業務場所で負傷し、使用者又は社会保険行政部門が、その負傷が業務以外の原因によるものであるという証明できる証拠を持っておらず、社会保険行政部門が次の各号に掲げる事由を労災と認定する場合、人民法院はそれを認める。」ことを明確にした。従って、実務において、使用者が立証不能の場合、通常、労災と認定されやすい。
最後に、突然死の発生場所が職場に該当するか否かを判断する際に、当時職責を履行していたか否かがキーポイントとなる。文頭の[2013]浦行初字第281号事件において、裁判所は、呉さんは昼休みに勤務場所で休憩していたものの、その職責が清掃であることに鑑み、昼休みに勤務場所を離れていない限り、勤務中と認定されるべきであると判断した。又、[2015]二中行終字第245号事件において、裁判所は、昼休みであるにもかかわらず、従業員が電話で午後の業務手配をしていたので、勤務中と認定されるべきであると指摘した。
以上のことから、昼休みに発病・負傷した場合に、労災と認定されるか否かは、一概に論じるわけにはいかない。従業員が労災を主張した場合、会社は関連要件を総合的に考慮した上で判断するべきである。