『内地と香港特別行政区の裁判所による民商事案件判決の相互承認?相互執行に関する取極

    渉外民商事活動の当事者が香港を司法管轄地とするケースはよく見られる。2018年までに、中国大陸と香港は下記のことに合意した。(1)仲裁裁決の相互執行。(2)当事者の協議による管轄の相互承認?相互執行。(3)婚姻家庭民事案件判決の承認?執行。(4)民商事案件証拠の採取の相互委託。各方面における司法協力を推し進めるために、2019年1月18日、大陸と香港は『内地と香港特別行政区の裁判所による民商事案件判決の相互承認?相互執行に関する取極』(以下『取極』という)を締結した。『取極』は関連手続の完成後に公布され、発効する。

    『取極』に係る内容は幅広く及び、以下は知的財産権に係る規定を中心に説明する。

    1、知的財産権案件の適用範囲

    (1)『取極』の適用対象は以下のとおりである。『貿易関連の知的財産権協定』第1条第2項でいう知的財産権、『民法総則』第123条第2項第7号、香港『植物品種保護条例』でいう「利者が植物新品種について享有する知的財産権」。

    (2)下記の案件は『取極』の適用対象外となる。大陸の人民法院が審理する発明特許又は実用新案権の侵害に係る案件、香港特別行政区の裁判所が審理する標準特許(独自付与特許を含む)案件、短期特許権侵害案件、大陸と香港特別行政区の裁判所が審理する標準必須特許ライセンス料の料率確認案件、及び(1)に列挙されていない他の知的財産権案件。

    よって、『取極』における知的財産権案件の適用範囲は極めて狭い。

    2、知的財産権案件の管轄

    『取極』によると、知的財産権案件については、権利侵害紛争案件、大陸の人民法院が審理する『不正競争防止法』第6条でいう不正競争紛争民事案件、香港特別行政区の裁判所が審理する偽物紛争案件において、権利侵害、不正競争、偽物行為は原審裁判所の所在地に行われ、かつ案件に係る知的財産権、権益は法に従い行為者の所在地に保護を受ける場合にのみ、原審裁判所が管轄権を有すると認定される。

    3、知的財産権確認の判決主文は承認?執行の対象にならず、責任負担の判決主文は承認?執行の対象になる

    知的財産権の効力、成立又は存在の有無に対する原審裁判所の判決主文は承認?執行されないものの、当該判決主文に基づいた責任負担の判決主文が『取極』の規定に合致する場合は、承認?執行される。

    4、承認?執行の対象になる具体的な判決主文

    (1)知的財産権侵害紛争案件、大陸の人民法院が審理する『不正競争防止法』第6条でいう不正競争紛争民事案件、香港特別行政区の裁判所が審理する偽物紛争案件について、判決の相互承認?相互執行の対象は、原審裁判所所在地における権利侵害行為により確定された金銭に係る判決主文に限られ、そのうち懲罰性賠償に係る判決主文が含まれる。

    (2)商業秘密侵害紛争案件について、判決の相互承認?相互執行の対象には、金銭に係る判決(懲罰性賠償に係る判決主文が含まれる)及び金銭以外に係る判決主文が含まれる。