立法動向:『知的財産権をめぐる紛争での行為保全案件の審査における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の規定』は2019年1月1日より施行

    知的財産の権利者は訴訟で勝訴したとしても、競争優位性を失い、又は営業秘密情報が漏れたなどの場合、物権のように「原状回復」にならない。そのため、最近、最高人民法院は『知的財産権をめぐる紛争での行為保全案件の審査における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の規定』(以下『規定』という)を公布し、知的財産権に係る紛争における行為保全(注:、訴訟を起こす前に知的財産権侵害行為の停止をもとめる、差止請求措置を指す。)について特別規定を行った。『規定』のポイントは以下の通りである。

    1、即時保全の適用条件

    『規定』第6条によると、下記のいずれかの状況に該当する場合は、直ちに行為保全措置を講じる。(1)申立人の営業秘密がやがて不正に開示される。(2)申立人の発表権、プライバシーなどの人身権利がやがて侵害を受ける。(3)係争中の知的財産権が後に不正処分される。(4)申立人の知的財産権が展示即売会など時効のある活動において侵害を受けているか又はやがて受ける。(5)時効のある人気の上映中番組が侵害を受けているか又はやがて受ける。

    2、行為保全の必要性の考慮要素

    『規定』第7条では、列挙+包括的条項の形で行為保全の必要性の考慮要素を定めている。(1)申立人の請求は基礎となる事実及び法的根拠があるか否か、保護の対象となる知的財産権の安定性(注:無効される可能性)は高いかどうか。(2)行為保全措置を講じなければ、申立人の合法的権益が補えない損害を受け、又は裁決の執行が困難になるなどの損害をもたらすか否か。(3)行為保全措置を講じなければ、申立人が受ける損害は、行為保全措置を講じることにより被申立人が受ける損害を超えるか否か。(4)行為保全措置を講じれば、公共の利益が損害を受けるか否か。

    又、『規定』では、知的財産権の安定性、補えない損害などの判断基準を具体化した。

    3、担保額

    財産保全の場合、30%の担保額の提供が必要という規則と違って、『規定』第11条の規定によると、申立人が提供すべき担保額は、被申立人が保全措置の執行により受けられる損失(侵害行為の停止を命じられる製品の売上収益、保管費用などの合理的損失を含む)に相当する。又、保全において、損失が担保金額を超えることを発見した場合、裁判所は担保金額の追加を要求することができる。