証人が出廷しない場合は、その証言は有効であるのか

    B社は貨物代金の支払が滞ったため、A社に訴えられた。法廷において、B社は倉庫担当者の陳さんの書面による証言を提出したが、陳さんは出廷しなかった。証言では「貨物を受け取っておらず、貨物受取書における署名は陳さん本人がサインしたものではない」などと記載されていた。A社は、証人が出廷しなかったため、証を無効とすべきであると主張した。

    では、証人が出廷しない場合、その証言は有効であるのか?

    それは一律的に論じるべきではない。

    証言は2種に分けられる。その一つは、当事者が提供する証言である。もう一つは、裁判所が職権により獲得した証言である。

    まず、当事者が提供する証言について。『民事訴訟法』第72条には、「事件の状況を知っている企業及び個人は、いずれも出廷して証言する義務を有する。」と規定している。又、同法第73条には、「人民法院の通知を受け取った場合、証人は出廷して証言しなければならない。次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、人民法院の許可を得て、書面による証言、視聴覚情報伝達技術又は視聴覚資料等の方法をもって証言することができる。(1)健康上の理由により出廷できない場合;……(4)その他正当な理由により出廷できない場合。」と規定している。更に、『民事訴訟証拠に関する最高人民法院の若干規定』第69条には、「次に掲げる証拠は、単独で事件事実を認定する根拠としてはならない。…… (5)正当な理由なく出廷・証言しない証人による証言。」と規定している。上記の法律及び司法解釈から見て、当事者が申請した証人は出廷するものとする。裁判所の許可なく、出廷しなかった場合、その証言のみで事件の事実を認定する根拠にはならず、他の証拠と結合して証拠チェーンとすることのみ可能。つまり、証人による証言は必然的に無効となり、採納されないわけではない。例えば、2006年第5期『最高人民法院公報』に記載された、福建三木グループ株式会社と福建省泉州市煌星不動産発展有限公司との不動産前売り契約係争事件において、最高人民法院は、「証人は出廷して証言をせず、またその所持すべきである他の書証の原本を提出しなかったため、当該証人による証言を認めない。」と指摘した。

    次に、裁判所が職権により獲得した証言について。『最高人民法院による「中華人民共和国民事訴訟法」の適用に関する司法解釈』第115条には、「裁判所は職権により証人による証言を獲得した場合に、証明資料の作成者に出廷するよう要求することができる。」と規定している。従って、裁判所が職権により証人による証言を獲得した場合は、証人は出廷しなければならないわけではなく、裁判所は証人を出廷させるか否かについて裁量権を有する。第115条には、「証明資料の作成者は正当な理由なく出廷を拒否する場合、その証明資料は事件事実を認定するための根拠にはならない。」と規定している。従って、裁判所が証人を出廷させ、証人が正当な理由なく拒否した場合は、仮に裁判所が職権により獲得した証人による証言であっても、採納されない。当然、司法実務において、このようなケースはめずらしい。

    要するに、証人による証言の提供を申請する当事者は、証言が採納されないというリスクを回避するために、できる限り証人に出廷してもらうべきである。証人が出廷しない場合、裁判官の判断に多大な影響を与えるため、当事者は他の関連証拠を収集し、証拠チェーンを形成することに取り組むべきである。