契約法上の手付金に関する罰則の適用について
売買双方は契約において、「売り手が納期を延ばし15日間を超えた場合は、相手方に対し手付金の10万元を返還し、契約総額の20%に相当する違約金を支払う。」ことを約定した。その後、売り手が期限通りに納品しなかったため、買い手は裁判所に訴訟を提起し、「契約法に定めた手付金罰則に基づき、売り手が倍の手付金を買い手に返還し、違約金を支払う」ことを請求した。
では、買い手の請求は裁判所に認められるのだろうか?それを判断するには、2つの問題を考慮すべきである。手付金罰則は双方当事者の約定により排除されるか?契約において手付金と違約金の両方を約定した場合、どのように適用されるのか?
まず、手付金罰則は双方の約定により排除されることが可能である。『<中華人民共和国担保法>適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈』第120条には、「一方の当事者が履行を遅らせ、又はその他の違約行為を行うことにより、契約の目的が実現できない場合、手付金罰則を適用することができる。法律には別途規定がある場合や、又は当事者らに別途約定がある場合は除外する。」と規定している。但し、手付金罰則適用の排除に係る約定は明確かつ直接的でなければ、通常認められない。例えば、(2015)一中民(商)終字第5651号事件において、裁判所は、双方の契約では「買い手が手付金を支払った後に違約した場合は、売り手は手付金を返還しない」と約定されているが、売り手が違約した場合は、倍の手付金を買い手に返還するかどうかについて明文化されていないので、約定により手付金に関する罰則の適用を排除することに該当しないと指摘し、最終的に「売り手が倍の手付金を返還する」という判決を下した。従って、双方は約定により手付金罰則の適用を排除することに合意した場合、契約において、手付金を受け取る当事者が違約した場合は、相手方に倍の手付金を返還する必要がない、又は手付金を100%返還する、というようなことを予め明記するよう勧める。
と手付金の両方を定めている状況下で、一方が違約した場合に、相手は違約金条項又は手付金条項の適用を選択することができる。」と規定している。司法実務において、裁判所の主な観点は以下の通りである。手付金罰則の適用を選択した場合に、約定を守る当事者は違約者に倍の手付金を返還させることができ、逆に違約金条款の適用を選択した場合は、違約者は手付金を返還するとともに、違約責任を負い、相応の違約金(約定された違約金が異常な場合は、状況に応じて調整することが可能)を支払う。倍の手付金では損失を補填するには不十分の場合は、『契約法』第114条の規定を参照して、裁判所?仲裁機関に調整を求めることもできる。例えば、(2014)滬二中民一(民)終字第1117号事件では、上海第二中級人民法院は、倍の手付金を返還すると同時に、一部の損失を賠償するよう命じた。
要するに、手付金罰則の具体的な適用については、法的根拠があるものの、司法実務において、類似の事件に対する判決においても一致しない場合がある。従って、契約当事者は手付金を約定する際に、契約において手付金返還規則及び違約責任を慎重に明記しておくことが上策である。