「無断で登録商標を変更する」の認定
商業活動において、商標権者は登録商標の使用時に、宣伝資料のデザインに合わせるため又はその他の目的で、自ら登録商標を変更(例えば、図形と文字からなる結合商標として商標登録を受けたものの、実際に文字と図形を単独で使用したりするなど)することが多い。しかし、このような行為は法的リスクが存在する。
『商標法』第49条には、「商標登録者が登録商標を使用する過程において、登録商標、登録者の名義、住所又はその他の登録事項を許可なく変更したときは、地方の工商行政管理部門は期限を設け是正するよう命じる。期間が満了した後もなお是正しないときは、商標局はその登録商標を取り消す。」と規定している。又、どのような場合に「無断で登録商標を変更」に該当するかについては、商標局の『商標審査及び審理基準』及び最高裁判所の『商標授権の行政案件審理における若干問題に関する意見』では、原則的な規定をしている。即ち、実際の使用対象は元の登録商標の主要な部分及び顕著な特徴に変化を生じさせ、変更後の商標を元の登録商標と対比させると、同一性がないと認識されやすい場合、登録商標の使用は規定違反となる。
実務において、登録商標への「変更」が『商標法』第49条における「無断で登録商標を変更する」に該当するか否かは、商標局及び裁判所の意見並びに実務規則によって判断される。以下では、「無断で登録商標を変更」に該当すると認定されるいくつかの「変更」行為を挙げる。
1、商標サイズの変更。実際に使用している商標は、登録商標のサイズ、字間を変更したり、登録商標において四角の枠、円形や線などをつけたりなど、些細な区別があるが、登録商標の顕著な部分を変更しておらず、依然として規定に合致すると見做される。
2、漢字商標のフォントを変更する。実際に使用している商標と登録商標を比較したところ、前者が後者の主要な部分及び顕著な特徴に変化を生じさせた場合は、「無断で登録商標を変更」に該当する。例えば、簡体字を繁体字に、明朝体字を草書に、印刷体を装飾体に変更するなど。
3、英語商標の大文字と小文字を変更する。大部分の英語アルファベットの大文字と小文字には大きな差異が存在する。従って、一部の会社は英文字で出願したときに、大文字と小文字の商標を両方とも登録した。例えば、アディダス社は「adidas」と「ADIDAS」両方とも商標として登録しており、リーボック社も「Reebok」と「REEBOK」の商標を同時に登録した。
4、図形の結合商標又は中国語と英語で表記された結合商標の構成部分を抽出して単独で使用する。原則として、図形の結合商標又は中国語と英語で表記された結合商標の場合は、その構成部分の一部を抽出して使用してはならず、使用すれば、「無断で登録商標を変更」に該当する。但し、下記のような例外が存在する。商慣習により結合商標の文字と図形を同時に使用することが不可能な場合。例えば、文字と図形の結合商標の構成部分である図形が領収書において表示することができない(北京市第一中級人民法院(2011)一中知行初字第2500号行政判決書を参考)。結合商標の図形と文字又は中国語と英語の間に対応関係を形成しており、仮にその構成部分を抽出して単独で使用しても、消費者は商品の出所を識別できる場合((2014)一中知行初字第1754号行政判決書、(2011)高行終字第513号行政判決書を参考)。但し、注意すべきことは、の状況に該当する場合は、商標管理機関による登録商標の使用に対する管理監督役割から見れば、相当のリスクが存在すると思われる。
以上のことから、商標が取り消され、さらに他者の商標と類似又は同一の商標となることにより、商標権侵害として訴えられるリスクを回避するために、企業は登録商標を使用するときに、できる限り変更を行わないようにすべきである。