休暇申請手続の重要性

    賈さんは骨増殖症を患い、直属の上司に病欠届及び病気休暇証明書を提出して病気休暇の承認を得た。しかし、人事部は書類不備を理由に、病気休暇を認めず、総経理も承認しなかった。その後、会社は、「就業規則」の規定によると、従業員が病気休暇を申請する場合、医療保険指定病院からの診断書及び診療録(カルテ、支払書類など)、医師からの病気休暇証明書を提出すべきことを理由に、一方的に賈さんとの労働契約を解除した。裁判所は会社による一方的な労働契約解除が違法だと認定した。本件において、会社敗訴の根本的な理由の一つは、休暇申請手続に係る規定に不備があったと考えられる。 

    実務において、従業員が休暇申請手続を行わず、使用者が無断欠勤を理由に労働契約を解除した場合、裁判所は労働契約解除の適法性を認めることが多い。但し、そもそも休暇申請手続に関する規則がなければ、従業員がそれを行わなかったということはできない。言い換えれば、休暇申請手続を明確にしておくことが、使用者が勝訴する前提である。

    従って、休暇申請手続は企業の規則制度の「必須事項」になっているからこそ、企業は休暇申請手続の合理性に注意を払うべきである。

    休暇申請手続を定めるときに、以下のことを回避するよう勧める。

    第一に、休暇の事由と添付必要な書類を曖昧にすること。下記のことについて、明確にしておく必要があると思われる。休暇申請手続は病気休暇、私用休暇、年次有給休暇など全ての休暇に適用するか、それとも企業の実況に応じて一部の休暇について特別な手続を適用するのかということ。休暇の種類に応じて、どのような書類を提出すべきかということ。例えば、病気休暇の場合は、病院の受付書、カルテ、処方箋、支払書類などを提出する。忌引休暇の場合は、死亡証明書を提出する等。

    第二に、審査承認のプロセスが煩雑すぎること。全ての休暇申請は、職級によって直属上司から、部署責任者、人事、総経理まで一連の承認が必要とした場合、効率が悪く、流れが煩雑になればなるほど、コミュニケーションがうまくいかないおそれがある。煩雑な流れになっている場合は、その合理性について疑われる余地が比較的に大きい。従って、休暇の事由、日数などによって、異なる承認プロセスを定めることは実用的である。

    第三に、休暇申請手続を履行しないことに対する取り扱いが不合理であること。多くの企業は、「休暇申請手続を行わず、勝手に出勤しない場合は、無断欠勤と見做される。無断欠勤日数が規定された日数に達した場合、規則制度に著しく違反したと見做される。」など合理的な規定を明確にしている。しかし、一部の企業は融通をきかす為、上記の規定をベースにして調整したが、残念ながらそれによって敗訴に至った。例えば、以下のような規定はその一例であると思われる。「病気休暇の申請が所定の手続きに合致せず、又は医療期間を超えた場合、私用休暇申請として取り扱い、会社はその休暇申請を拒否する権利がある。この場合に、従業員が出勤しなければ、一律に無断欠勤と見なし、会社は一方的に労働契約を解除することができる。」実は、従業員が医療期間満了後もなお元の業務に従事できず、使用者で別途手配された業務にも従事できない場合は、使用者は経済補償金を支払うことにより、労働契約を解除することができる。もし使用者は上記の規定のとおり、直接無断欠勤を理由に、いかなる経済補償を支払わずに労働契約を解除すれば、かえって、賃金の2倍に相当する賠償金を支払わせるリスクがある。一方、従業員に確かに用事(例えば、母親がなくなった一人子で、交通事故により入院した父親の世話をすることなど)がある場合に、使用者は上記のことを理由に労働契約を解除すれば、違法解除と認定されるリスクが高いと思われる。

    最後に、休暇申請手続を明確に定めている状況下で、会社は休暇申請手続が厳格に実施されているか否かに関心を持つべきである。実務において、休暇申請手続が厳格に実施されておらず、従業員が事後申請を行ったり、私用休暇、病気休暇、年次有給休暇の間に勝手な転換を行ったりすることなどを認める使用者も少なくない。それらの問題は、往々に従業員が、使用者の休暇申請手続が不明確であるため、休暇申請手続の未実施を理由に無断欠勤と見做すべきではないことを主張する重要な切り札となる。