従業員が試用期間中に長期で病欠した場合の対応
陳さんとA社は労働契約を締結し、「契約期間を1年とし、試用期間を1ヵ月とする」ことを約定した。試用期間内に陳さんは罹病し、病院から6ヵ月間の休職が必要ととするという内容の診断書が発行された。A社は「陳さんが体調不良のため採用条件を満たさない」と判断し、それを理由に労働契約を解除した。
数多くの会社は、「体が健康である」ことを採用条件としている。しかし、労働者が病気で労働を提供できない状況下で、使用者が単に「労働者が採用条件を満たさない」ことを理由に、試用期間内に労働契約を解除することは、通常認められないはずだ。その原因としては、関係法律法令により定められている「医療期間」の立法趣旨から見れば、法律で規定された特殊な職務に就くための必要条件を満たさない場合(例えば、伝染病に罹患した労働者が食品加工職務に就いてはならない)を除き、使用者が労働者の病気を理由に勝手に労働契約を解除することは、明らかに労働者に対して不公平である。
一方、労働者の病気休暇期間が長く、場合によって、試用期間を超えた場合、使用者は短期間内に労働者に対し労働能力評価を行うことが難しい又は評価ができなくなる。これでは明らかに使用者に対して不公平になる。では、使用者は、このような問題を防ぎ?対応するために如何なる措置をとるべきか?
先ずは、採用条件の中で休暇日数の上限を設けること。使用者は営利法人として自主的な経営権を有するため、このような規定は、認められる可能性が高い。司法実務においても否定派はあまり見かけられないようである。具体的には、以下のような規定が考えられる。「試用期間内に理由の如何を問わず、欠勤(私用休暇、病気休暇などの各種の休暇、無断欠勤を含む)が累計で10稼働日を超えてはならない。」 仮にこの規定の合法性について不確実性があるため、一方的な契約解除をしなくとも、労働契約の合意解除又は中止を進めるためにに役立つと思われる。
次に、協議による労働契約の解除を図ること。その場合、病欠期間の長さによって、労働者の「医療期間内に」取得できる労働報酬及び/又はその他の福利待遇などを総合的に考慮し、臨機応変に対応する必要があると思われる。
第三に、協議により労働契約を中止すること。元労働部による『〈中華人民共和国労働法〉貫徹執行の若干問題に関する意見』第2.1.6条及び第2.1.8条の規定によると、使用者と長期間病気休暇を取る労働者は、協議の上、合意した場合、労働契約における一部の条項を変更し、労働者が出勤しない期間の関連事項について特別約定を行うことができる。通説として、労働契約の中止は、特別約定可能な範囲に含まれているべきである。なお、一部の地区では、労働契約中止について明文化されており、例えば、『上海市労働契約条例』第26条、『山西省労働契約条例』第23、24条等。協議により労働契約を中止した場合、病気が治り、労働者が職場に復帰した後、使用者は試用期間評価を続けることができ、双方にとって、公平かつ合理的であると思われる。従って、会社所在地に地方規定がある場合、使用者はそのルートに沿って解決を試みることが考えられる。