ODM生産における特許権侵害リスク

    中国の有名なエアコンのブランドA社は、エアコン製造業者であるB社で設計された製品を気に入った。双方は協議の上、B社が自らの設計を用いてエアコン製品を製造後、完成品にA社のブランドロゴを印字し、A社に引き渡し、A社が販売することに合意した。しかし、その発売後に、C社は、当該製品がC社の特許権を侵害しているとして、A社とB社を訴えた。A社はB社で設計?製造された製品に対して特許権侵害責任を負うべきか? A社が責任を負うべきなのであれば、製造者に該当するのか、それとも販売者に該当するのか?

    恐らく多くの人は驚いて飛び上がるだろう。「そんなはずはない。ODM生産の特徴は、設計及び製造は全て受託側の責任で、委託側とは無関係である。ODM契約において受託側の製品が第三者の知的財産権を侵害した場合は、全ての責任は受託側が負うことを約定しておけばよい。委託側に製造者として特許権侵害責任を負わせるのはおかしいのではないか。あくまでも販売者で、「合法的な出所がある」ことを理由に抗弁することができる。」

    しかし、実際、このような考え方は危険だ。

    ODM生産というビジネスモデルにおいて、委託側は権利侵害に係る製品の「製造者」に該当するか否かについては、関連法律及び司法解釈では明確な観点や判断規則がない。但し、司法実務に対する調査結果によると、ODM取引において、委託側は製造者に該当するか否かについては、主に以下の三つの観点がある。

    一番目の観点は、権利侵害に係る製品に委託側のブランドロゴが付けられる限り、委託側は製造者に該当するというものである((2006)高民終字第1570号、(2006)高民終字第515号、(2006)粤高法民三終字第365号)。多くの裁判所はこの観点を採っている。

    二番目の観点は、権利侵害に係る製品の包装において委託側のブランドロゴを付けていても、委託側に製造能力がないことを証明できる証拠がある場合は、委託側を「販売者」と認定すべきであるというものである((2015)粤高法民三終字第329、330号、(2014)粤高法民三終字第91号、(2014)成民初字第332号)。

    三番目の観点は、権利侵害に係る製品によりその創造意志及び技術要求を実現した者が、創造者に該当するというものである((2003)南市民三初字第21号、(2012)民申字第197号)。当該観点によると、ODM取引において、委託側は、通常、製造者ではなく、販売者に該当すると認定される。

    従って、裁判所は一番目又は二番目の観点を採る場合、ODM取引における委託側は権利侵害に係る製品の製造者というレッテルを張られる可能性がある。この場合に、有名なブランドのイメージや名誉が大きく毀損されたとしても、損害の存在及びその額を証明できないため、受託側に求償することが難しい。一歩退いて、仮に二番目又は三番目の観点により、最終的に委託側は販売者と認定されたとしても、「合法的な出所がある」ことを理由に抗弁し、これによって権利侵害に係る製品の販売停止という責任を負うだけでよいか否かについては、個別事件において証拠が十分であるか(例えば、受託側による特許権侵害について、委託側が知っている、又は知り得たことを証明できる証拠がある場合)否かによって、不確実性が存在する。

    従って、ODM生産の委託側は、ODM生産に係る特許権侵害リスクを防止する意識を強化しなければならない。主に、以下の面からリスクを抑制することが考えられる。 

    第一に、ODM生産を行う前に、FTO調査を実施する。ODM取引において、受託側が提供する製品が特許権に係るか否かを十分に調査する。特許権に係る場合は、係る知的財産権の関連情報を詳細に調べ、相手方に対し関連知的財産権の証明資料を提供してもらい真剣に審査を行い、又、第三者の知的財産権に係るか否かについても技術審査を行う。

    第二に、ODM生産委託契約における知的財産権の関連条項において瑕疵担保責任を明確に約定する。万が一製品が権利侵害を訴えられる場合は、委託側は契約相対性の原則に基づいて、受託側に求償することができる。約定する際に、損害賠償の範囲及び方式を明確に約定すべきである。