『公安機関の経済犯罪案件処理に関する最高人民検察院、公安部の若干規定』は2018年1月1日

    2006年の『経済犯罪案件の処理に関する公安機関の若干規定』(以下『旧規定』という)は経済犯罪案件に係る管轄、立件、立件中止、強制措置、公安機関間の協力規則などにおいて重要なガイドランとなっていた。しかし、インターネットの発展につれて、新型の経済犯罪案件は多発し、地域又は分野に跨る組織犯罪は目立ち、公安機関と検察機関との間の協力?引継ぎに対して改善を行う必要がある。2017年11月、最高人民検察院と公安部が連名で『公安機関の経済犯罪案件の処理に関する最高人民検察院、公安部の若干規定』(以下『新規定』という)を公布した。

    以下は企業経営に係るポイントを紹介する。

    1、総則において、民営企業家、中核研究者に係わる場合の特別注意事項を追加した。

    『新規定』第5条には、「公安機関は事件取扱いの方法に注意し、事件取扱いのタイミング及び方式を慎重に選択し、順調な生産経営活動を保障する。」と規定している。これは、第18条第2項(「公安機関は立件した後、調査?捜査などの措置を講じる。但し、人身、財産に係る権利を制限する強制措置を講じてはならない。」)を結び合わせて考えれば、今後、公安機関は、刑事事件に係わる民営企業家や中核研究開発者に対する人身拘束について、より慎重に取り組むことが予想される。

    2、管轄において、企業による経済犯罪、及び非国家公務員が職務上の便宜を利用して実施する経済犯罪への管轄についての規定を追加した。

    (1)『旧規定』では、企業による経済犯罪への管轄について規定を定めていない。『新規定』には、「企業が経済犯罪を行った場合は、犯罪行為の発生地又は所在地の公安機関の管轄に属する。住所地とは、通常、企業の登録住所を指す。実務において、企業の主な経営地と住所地が一致しないケースもある。この場合は、主な経営地を住所地とする。」と特に規定している。

    (2)非国家公務員が収賄罪、業務横領罪、資金流用罪などを犯した場合に、被害者である企業は被疑者の犯罪行為の発生地又は所在地の公安機関に通報するほかない。実務において、企業所在地、犯罪行為の発生地、容疑者の居住地等が一致しない場合、公安機関は口実を設けて責任転嫁することが多い。『新規定』には、「非国家公務員が職務上の便宜を利用して経済犯罪を行った場合は、被疑者の勤務先所在地の公安機関の管轄に属する。犯罪行為の発生地又は容疑者居住地の公安機関による管轄に属することがより適切であると判断される場合は、犯罪行為の発生地又は被疑者居住地の公安機関による管轄を受けることもできる。」と明確にしている。当該規定により、経済犯罪の管轄ルールを明らかにするとともに、公安機関が口実を設けて責任のなすりうつけ合いをする問題も回避することができる。

    3、捜査において、刑事事件とういう名目で民事訴訟の証拠を収集するという行為についての規定を追加した。『新規定』第35条第2項には、「経済犯罪案件と無関係な証拠?資料の調査、取得を禁止する。捜査を理由に捜査措置を濫用し、他人のために民事訴訟の証拠を収集してはならない。」と規定している。訴訟事件の相手が裁判所に対して、『新規定』第35条第2項に合致する証拠の収集を申立して取得した場合、企業は、本条項の規定を利用して、かかる証拠の合法性に対して異議申立を適時に行う。

    尚、『新規定』では、財産権の平等保護、インターネットを利用する犯罪行為への管轄、立件中止などについても新たな規定を追加した。それらの規定に対しても企業は関心を寄せるべきである。