外国人がシェア自転車を使用する場合のリスク

    日本人であるAさんは退勤後に、シェア自転車で帰宅している途中、他人にぶつけられる事故に遭い、怪我をした。Aさんはシェア自転車の事業者に対し損害賠償を要求するとともに、勤務先の会社に対し労働災害の申請を要求した。シェア自転車の事業者は、「シェア自転車の品質不良による傷害事故に対してのみ責任を負う。Aさんの事故は本人の使用が不適切であった」と主張し、賠償を拒否した。Aさんの勤務先の会社は、「Aさんは中国人ではなく、身分証明証をもっておらず、実名認証ができないため、シェア自転車を利用する行為自体が法律に違反する」と主張し、労働災害申請の要求を認めなかった。Aさんはどうしたらいいか分からず困っている。

    実は、外国人によるシェア自転車利用の適法性について、Aさんの勤務先の会社の観点は間違いである。ofo、mobike等のシェア自転車を利用する場合、外国人はパスポートにより実名認証及びユーザー登録を行うことができる。満12歳以上で中国の携帯番号の使用者である限り、外国人でもシェア自転車を利用することができる。

    シェア自転車は利用者に便利さをもたらすが、同時にリスクも存在している。従って、損害賠償請求が認められず、どうしようもないことにならないために、外国人はシェア自転車を利用する場合、状況によってそれぞれの対処方法を把握しておくべきと思われる。

    以下は誰に対して損害賠償を求めるかによって状況を区別して分析する。

    1、シェア自転車の事業者に対して損害賠償を求める

    (1)シェア自転車の品質問題により損害が生じた場合は、事業者に対して直接損害賠償を求めることができる。実務において、殆どのシェア自転車の事業者は製品品質責任保険に加入しているので、保険により賠償を行うことになる。例えば、mobikeというシェア自転車の事業者は衆安保険に加入しており、契約において、「ユーザーがmobikeのシェア自転車の使用中、、自転車自体の欠陥により人身傷害事故が生じ、かつ人身傷害事故により死亡又は後遺症障害状態になった、或いは第三者に人身傷害又は財産的損失をもたらした場合、司法、行政等の部門の確定判決?裁定により認められた場合は、保険会社はその損害賠償を行う。」と明確にしている。ofoも類似の保険に加入している。

    (2)ユーザーがシェア自転車の品質不良の原因によらない事故に遭った場合は、一概に論じるわけにはいかず、ユーザー登録に係る協議書において関連約定を行っているか否か、シェア自転車の事業者が関連保険に加入しているか否かを確認しなければならない。ユーザー登録に係る協議書において関連約定を行っているか、又はシェア自転車の事業者が関連保険に加入している場合は、損害賠償を求める余地がある。例えば、ofoというシェア自転車に係る保険条項には、「ユーザーがofoシェア自転車を利用中、傷害事故が生じた場合は、事故の原因が自転車自体によるものか、それとも外部要因によるものかに拘わらず、相応の賠償を行う。」と規定している。但し、mobikeの場合、自転車自体の品質不良によらない事故の責任を排除している。

    2、第三者に対して損害賠償を求める
第三者に権利を侵害された場合に、例えば、第三者が交通ルール違反により、シェア自転車利用者に傷をつけた場合、シェア自転車利用者は『権利侵害責任法』に照らして賠償を求めることができる。

    3、使用者に対して労働災害の申請を求める

    労働災害の関連規定に合致し(本件のAさんが退勤後の帰宅途中でぶつけられ、交通事故が生じたことによる損害は労働災害に該当する)、中国の社会保険料を納付している場合は、使用者に対して労働災害を申請するよう求めることができる。但し、『社会保険法』には、中国に就業する外国人が社会保険に加入しなければならないという強行規定はない。そのため、実務において、多くの企業は外国籍従業員のために中国国内の社会保険料を納付しておらず、親会社の所在地の国で社会保険料を納付したり、商業的保険に加入したりすることが一般的である。従って、外国籍従業員は自分の利益を的確に保護するために、国外の社会保険又は商業的保険における適用条項の有無を確認し、把握しておくべきである。