会社法司法解釈四による外商投資企業への影響
合弁会社 C 社は、外国企業 A 社と中国にある民間企業 B 社による共同設立会社で、主に B 社が高級管理職を任命して事業を進めている。財務報告によると、C 社は長年にわたって損失を被っている。これに鑑み、A 社はその保有する持分を B 社に譲渡し、合弁から脱退した。数ヶ月後、A 社は偶然、B 社から任命された高級管理職が無断で会社を別途設立しており、かつ長年にわたって不合理な高価格で C 社に原材料を販売していたことを知った。A 社は C 社に対し、財務に係る書類を調べるよう求めたが、C 社は、それを拒否した。A 社は立腹して裁判所に訴訟を起こした。
『〈中華人民共和国会社法〉の適用の若干問題に関する最高人民法院の規定(四)』(以下『解釈四』という)の公布以前は、A社の主張は裁判所に認められなかったが、『解釈四』の施行に伴い、元株主である A 社は知る権利を行使できるようになっている。但し、元株主は訴権を行使するには、一定の条件制限を受ける。つまり、「持分を保有する期間内にその合法的権利が侵害された」ことを証明できる初歩的な証拠があり、かつ「法に従いその持分保有期間における特定の書類に対してのみ」閲覧又は複製を請求できる。
株主の知る権利について、企業は以下の 2 点にも注意を払うべきである。1、『解釈四』第 7 条と第 10 条の規定では、会社による自治を尊重する傾向を示すとともに、会社が定款において株主の知る権利の行使について具体的な規則を定めることを認めている。例えば、株主が知る権利の行使により、会社の正常な経営に影響を及ぼすことを防止するために、会社は定款において「知る権利を行使する場所、日時、頻度、閲覧が可能な書類の種類(例えば、原始証憑)」などを定めることができる。但し、会社が定款において前述の規定を定め、株主が関連書類を調べる権利は実質的に剥奪された場合、係る条項の効力が否定されるリスクがある。2、専門知識がない、又は中国の財務制度をよく知らない外国出資者に対し、『解釈四』は、第三者である専門機構の利用ルールを明確にし、その知る権利の行使を確保している。つまり、「株主が立ち会う場合に、法律又は業務執行規範に従い秘密保持義務を負う会計士、弁護士などの仲介機構の担当者が協力することにより」、株主は会社の書類を調べることができる。 知る権利を除き、『解釈四』では、株主会、董事会の決議の効力について新しく規定を明確にしており、それらの新規定は企業の方策の有効性に影響を与える。
まず、特定の状況下で手続上の瑕疵が存在すると、決議は成立しない。『解釈四』第 5 条では、決議不成立についての規定が追加された。具体的には、以下の 4 つの状況いずれかに該当する場合、決議は成立しない。①会社が会議を開かなかった場合;②会議で決議事項についての議決が行われなかった場合;③会議の出席人数又は株主の議決権が会社法又は会社定款の規定に合致しない場合;④会議による議決結果が会社法又は会社定款で規定される通過率に満たない場合。外国出資者が中国国外にいるため、外資企業は実際に株主会を開かないことが多い。従って、決議不成立のリスクを避けるためには、会社定款において「株主会を開かずに決定を直接下すことができる、かつ株主全員が決定書に署名、押印する」ことを定めているか否かを確認するべきである。
次に、『解釈四』では法的関係の安定を維持するために、裁量棄却制度を確立した。『解釈四』第 4 条には、「株主が株主会又は株主総会、董事会の決議の取り消しを請求し、……但し、会議の招集手続又は議決方式に軽微な瑕疵が存在するに過ぎず、決議に実質的な影響を与えていない場合に、人民法院は認めない。」と規定している。従って、決議に軽微な瑕疵が存在する場合は、裁判所は決議の取り消し請求を認めない可能性がある。
第三、『民法総則』で確立された「善意の第三者を保護する」という原則に相応し、『解釈四』第 6 条には、「株主会又は株主総会、董事会の決議が人民法院の判決により無効又は取り消しと確認された場合、会社が当該決議に従い善意の相手方と形成した民事法律関係は影響を受けない。」と明確にしている。従って、決議が無効となり、又は取り消された場合、会社は対内的に相手方の責任を追及することができる。但し、第三者が善意である限り、会社が対外的に当該善意の第三者と形成した法的関係は影響を受けない。
そのほか、『解釈四』では株主の利益配当権、株主代表の訴訟制度について新しく規定を追加している。法的リスクを回避するために、企業と株主はそれらの新規定を適時把握し、会社の実況に応じて、会社定款、管理制度に対して審査や調整を行う必要がある。