正規品を販売する場合も商標権侵害になる可能性があるのか?
実店舗又はネットショップは顧客を引くために、「XX専売」や「XXブランドのディスカウントストア」と表示することが多い。偽物を販売する場合は、言うまでもなく商標権侵害になる。但し、正規品を販売する場合も商標権侵害になるリスクがあると言われれば、多くの人は、不思議に思うだろう。
残念ながらこれは冗談ではない。しかし、なぜ正規品を販売する場合も商標権侵害になる可能性があるのか?
これは商標のフェア?ユースに係わる問題である。一般的には、商標のフェア?ユースは、記述的使用と指示的使用に分けられる。記述的使用について、中国『商標法』第59条では、「登録商標に、この商品の通用名称、図形、規格、若しくは商品の品質、主要な原材料、機能、用途、重量、数量及びその他の特徴を直接に表すものを含む、又は地名を含むときは、登録商標専用権者は、他人の正当な使用を禁止する権利を有しない。」を定めているが、指示的使用について、商標法において明文化されていない。一方、国家工商総局による『自動車部品販売店、自動車補修店が無断で他人の登録商標を使用するのを禁止することに関する通知』(1995年)、『他人の登録商標を無断で専売店(専門修理点)の名称及び看板に使用するのを禁止することに関する通知』(1996 年)(いずれも廃止となったが、一定の参考価値がある)では、指示的使用について、「商標登録者の許可を得ることなく、商標登録者の登録商標を専売店、専門店、専門修理店の名称又は看板において使用してはならない。」こと、「商品の販売拠点及び特定サービスの提供拠点は、商品及びサービスの範囲を説明するときに、‘当店は××製品を修理する’、‘当店は××洋服を販売する’など説明的な表現を使用することができる。但し、表現において統一的な字体を使用しなければならず、商標を目立つようにしてはならない。」ことが定められている。更に、司法実務において、数多くの判決では、指示的使用及びその判断基準について論じており、指示的使用の判断基準の明確化?統一化にとって有意義と思われる。
いままでの裁判例を総合的に分析すると、指示的使用の判断基準には不確実性があるにもかかわらず、正規品販売における商標の使用がフェア?ユースであるか、それとも権利侵害となるかの判断をするための基本的な要領やルールとなっている。
以下の2点から、フェア?ユースかそれとも権利侵害かを判断されると考えられる。
第一に、主体混同の可能性。前述した国家工商総局の規定はそれに着眼して定められたものであると思われる。実務において、看板又は店舗の目立つところで他人の登録商標を使用する場合は、通常、商標権侵害になると認定される(注:場合によって不正競争と共通するところがあるため、請求権の根拠により不正競争と認定される場合もある)。又、一般的には、商標権侵害と訴えられた標識のサイズ、位置、顕著性、背景等の具体的な使用状況が、大衆に伝えるイメージを総合的に考慮し、関連する大衆への混同可能性を判断する。例えば、ネットショップの目立つところで「Yishion(以純)紳士服」、「Yishion(以純)割引淘宝(タオバオ)ネットショップ」など他人の商標を使用しており、その他には説明を全く行っていない場合には、転売の対象が正規品であっても、裁判所は、「当該ネットショップと「Yishion(以純)」ブランドの間に特殊な関係があるという消費者の誤認を招くため、権利侵害になる」と認定した(詳細は(2014)浙台知民初字第108号判決、(2013)杭余知初字第117号判決を参照)。
第二に、係る商標の信用を貶める可能性。商標は商品出所表示機能以外に、品質保証、などを含む多くの役割を果たしている。再包装、ラベル貼付、再生加工などを行う場合は、係る商標を使用する商品への信頼や品質に対する大衆の認識に影響する恐れがあるため、登録商標の権利を侵害する可能性がある。「不二家」登録商標侵害事件において、裁判所は、次のことを述べた。「自ら包装を製造し、それらの包装に他人の商標標識を表示し、小分け包装の事実及び実施者の情報を明記していない上、かつ包装の品質が基準に満たしていない。商標権者からの商品に対する小分け包装及び転売行為は、商標の品質保証機能を損なうため、商標権侵害に該当し、商標の指示的使用ではなく、商標権の消尽論による保護をも受けない。」 従って、大まかに言えば、再包装などの行為を行う場合の留意すべき点は以下の通りであると思われる。(1)商標の品質が劣化しない;(2)関連の主体を区分するよう変更行為の主体を明記する。
なお、インターネット上で公開された製品分類、商品名称、捜索キーワード並びに製品宣伝パンフレットにおいて他人の商標を使用することにより、自分が当該ブランドに関連する商品を販売し又はサービスを提供していることを示すことは、通常、商標権侵害にならない。