有限責任会社における持分の相続について
某有限責任会社の出資者である李さんがある日突然、死亡した。生前に遺言書を作成していなかったため、その奥さんと未成年の息子が相続人となった。奥さんは、自分と息子で持分を相続し、行政管理機関への登録手続きを行い、かつ自分が李さんの職務(取締役社長)を引き継ぐことを要求した。その結果、他の出資者が、この二人を出資者として受け入れること、また奥さんを取締役社長を務めることを不満に思いつつも、当該要求を拒否できるのか分からず悩んでいる。
実務において、類似事件は珍しくない。このような事件における諸問題は、相続法及び会社法に係る。
持分は比較的特殊な権利であり、財産としての属性と地位としての属性を同時に有する。『相続法』の関連規定及び立法趣旨から見れば、相続人は持分に係る財産的権利(自益権)を相続することができる。持分に係る地位的権利(共益権)を相続することができるか否かについて、『会社法』第75条において「自然人出資者が死亡した場合、その適法な相続人は出資者としての資格を相続することができる。但し、会社定款に別段の定めがある場合はこの限りでない。」と規定されているため、会社定款に別途規定がない限り、適法な相続人は共益権を相続することができると思われる。
『会社法』第75条の規定に基づいて、出資者としての地位を相続するには、他の出資者の同意を得る必要があるという観点もあったが、現在、司法実務における普遍的な観点は、このような場合には、『会社法』における出資者が社外へ持分を譲渡する場合での、過半数の出資者の同意を得るという規定を参照する必要がない(例、(2009)滬一中民五(商)終字第7号等)。
よって、会社定款には持分相続の関連規定がない場合は、会社側は出資者の相続人が出資者会に入る要求に対して「NO 」という余地はありえない。特に主要出資者が事故に遭ったり、又は複数の相続人が存在する場合には、紛争になりやすく、会社の将来の方向性及び安定性などにも予測できない影響を与える。
従って、会社定款において持分相続、特に出資者としての地位の相続について、あらかじめ明文化しておくことが必要と思われる。
会社定款の関連条項を設ける際に、以下の問題について留意しておく必要がある。
第一、出資者としての資格を相続できるか否かを明確にする。相続できるようにする場合は、一定の前提条件を設定することが考えられる。例えば、相続人の参加により会社の「人 的結合関係」を破壊しないように、「自然人の出資者が死亡した後、その適法な相続人は当該出資者が生前に保有する持分に相当する財産価値のみを相続する。会社の他の出資者は持分比率に応じて持分を譲り受ける。」と規定することができる。又、相続人による出資者としての地位を相続することを条件付きで認めるようにする場合は、「出資者が死亡した後、その適法な相続人が当該出資者の地位を相続する場合は、過半数の出資者の同意を得る必要がある」と規定することが考えられる。
第二、相続対象となる持分価値の確定方法と手続を明確にする。持分譲渡価格の計算方法については、出資額や純資産や評価機構による評価価値などに基づき計算すると約定することができる。
第三、手続上(持分譲渡に係る通知、返答期限、方法、返答しない場合の結果などを含む)の規定を明確に約定する。
最後に、文頭の持分相続事件のように、出資者の生前の職務を相続できるかについて紛争となる場合もある。従って、定款において「相続人は出資者の生前の職務を必然的に相続するわけではなく、会社の権力機構は定款で規定される条件と手続によって確定する」旨を明記しておくほうがよい。