女性従業員の「三期」待遇
劉さんはA社の部門マネージャーを務めている。妊娠後、保胎休暇(産前に妊婦が不快感を訴え医師の診断を受け、それに基づく母体と胎児保護のための休暇)を取り、A社に対し当人の賃金基準に従い賃金を支払うよう要求したが拒否された。出産後、劉さんは生育手当を受領する際に、生育手当が賃金をはるかに下回っていることに気づき、A社に対し不足分を補うよう要求したが、こちらも拒否された。又、産休終了後、劉さんは本人の賃金基準に従い哺乳休暇の賃金を支払うよう要求したが、同様に拒否された。その結果、双方は「三期」の待遇について紛争することとなった。
「三期」とは、妊娠期間、出産期間、哺乳期間を指す。『女性権益保障法』第27条に基づき、会社に対し「三期」における賃金を引き下げてはならないことを主張する女性従業員は少なくない。しかし、実際は「三期」期間内に、女性従業員に対し一定の特殊保障を与えるべきであるとされる一方、女性従業員が通常時と同様の労働を提供できないため、関連法律法規では「三期」の待遇について特別な規定を定めている。
以下では、「三期」における待遇に関する規定を類型化して、整理してみよう。
類型1は、関連待遇に関する規定が、比較的明確かつ統一的であり、具体的には出産前診断休暇、保胎休暇、出産休暇を含む。詳細は以下のとおりである。
類型 | 待遇 | 法的根拠 | 備考 |
---|---|---|---|
出産前診断休暇 | 従業員本人の賃金基準に従う | 『女性従業員労働保護特別規定』第 6条 | — |
「保胎休暇」 | 病気休暇の賃金基準を参照する | 『国家労働総局保険福利司による女性従業員保胎休暇と病気休暇が6ヶ月超過後の出産の待遇問題について上海市労働局への返答』 | ● 法定の「三期」における休暇ではない ● 病気休暇の条件(例えば、医者による証明や会社の規則制度により要求されるその他の文書及び手続)を満たさなければならない。 |
出産休暇 | 一般的には、出産保険から「生育手当」が支給される | 『女性従業員労働保護特別規定』第 8条 | ● 一部の地方では、出産手当が従業員本人の賃金基準を下回っている場合、不足分は会社が補って支払うと明文化している。例えば、『北京市企業従業員生育保険規定』、『広東省<女性従業員労働保護特別規定>の実施弁法』、『上海市人民政府<女性従業員労働保護特別規定>の徹底実施』等。 |
類型2は、関連待遇に関する規定が、地方によってばらつきがあり、実務においても観点が異なるものである。具体的には「出産前休暇」と「哺乳休暇」を含む。詳細は以下のとおりである。
類型 | 待遇 | 法的根拠 | 備考 |
---|---|---|---|
「産前休業」 | 各地の具体的な規定に従うものとし、規定がなければ、病気休暇における賃金基準を参照するものとする | 地方規定の有無による。 | ● 「出産休暇」に関する規定にいう「出産日前15日の休暇を取得できる」ことを指すわけではない ● これは、妊娠7ヶ月以上の女性従業員に対して一部の地方で規定されている福利である。例えば、『上海市女性従業員労働保護弁法』には、「女性従業員は出産2.5ヶ月前診断休暇を申請することができる。待遇は従業員本人賃金の80%を下回ってはならない。」と規定されており、又『江西省女性従業員労働保護実施弁法』には、「女性従業員が妊娠7ヶ月以上の場合は休暇を取ることができる。待遇は従業員本人賃金の60%~80%である。」と規定している。 |
哺乳休暇 | 従業員本人の賃金基準に従う(所在地では特別規定があれば、その規定に従うものとする) | 『女性従業員労働保護特別規定』第9条 | ● 一部の地方では哺乳休暇待遇について特別な規定を定めている。例えば、『上海市〈中華人民共和国女性権益保障法〉の実施弁法』及び『上海市女性従業員労働保護弁法』では、特殊な状況下で、従業員は6ヶ月の哺乳休暇を申請することができ、哺乳休暇待遇は従業員本人賃金の80%を下回ってはならないと規定している。 |