『最高人民法院による商標の権利付与・権利確定に係る行政案件の審理の若干問題に関する規定』が2017年3月1日より施行

    近年商標の権利付与・権利確定に係る案件から浮き出る各問題を解決し、司法基準を統一させるために、最高人民法院は、『最高人民法院による商標の権利付与・権利確定に係る行政案件の審理の若干問題に関する意見』(2010年公布、以下『意見』という)という指導的意見を踏まえ、『最高人民法院による商標の権利付与・権利確定に係る行政案件の審理の若干問題に関する規定』(以下『規定』という)を公布した。『規定』の目玉は以下の通りである。

    (1)「混同可能性」の判断

    『規定』第12条では、混同可能性を判断する際に必要な要素、①商標表示の類似程度、②商品の類似程度、③保護対象となる商標の顕著性と知名度、④関連大衆の注意度、⑤そのほかの関連要素、を規定している。   

    又、同条では、二つの参考要素、即ち、①商標申請者の主観意図、②実際混同の証拠、を明確にしている。 

    (2)不正な手段による抜け駆け登録紛争事件における先使用者の証明責任の軽減

    『商標法』第32条に規定されている「不正な手段による抜け駆け登録」については、2010年の『意見』によると、「他人が既に使用している一定の影響力を有する商標を不正な手段によって抜け駆けして登録」したことの証明責任は、基本的に先使用者側にある。『規定』では、条件を「既に使用されている商標が一定の影響力を有し、かつ申請者が当該商標を知っている又は知りえる」に変更し、証明の内容を縮小し、かつ推定ルールを採り、即ち、上記の条件を満たしているとき、係争商標出願者が自分に悪意でないことを証明できる場合を除き、「不正な手段による抜け駆け登録」が成立する。

    (3) 「先行権利」について

    『規定』第18条では、商標法第32条の先行権利を肯定した上で、「権利」の範囲は係争商標出願前の民事権利又はその他の保護を受けるべき合法的権益に及ぶことを明確にしている。

    『規定』第19条~第22条では、著作権、氏名、商号、人物イメージ著作権、作品名称の「先行権利」該当基準を明確にしている。関連該当基準は、まだ不明確なところがあるが、関連案件を取り扱う際に、その方向性と予測的可能性はある程度見えてくる。

    最後に、草案に記載された大量の冒認出願、商標共存同意制度などについての条文は最終的に『規定』に入れていないことから、それらの問題に関しては、司法機関では観点の統一がされていないと推測する。